学ビノ園 第9話


「もちろん、君たちの安全を」
「嘘ですね」
「おやおや、信じてもらえないかな?それと、宰相という地位を忘れ、学生たちと」
「嘘ですね」
「・・・ナナリー。君の体の事も気にしていた。だからこの目で」
「嘘ですね」

シュナイゼルが何かを言っても、ナナリーはピシリと切って捨てた。
この後も色々とシュナイゼルは口にしたが、全てを言い切る前にナナリーは嘘だと断言し、聞く耳さえ持たなかった。
さてさて困った物だと、シュナイゼルはロイヤルスマイルを絶やすことなくナナリーを見つめていると、その視線が気に入らないとルルーシュがシュナイゼルを睨みつけた。
シュナイゼルはルルーシュに見つめられるなんて、至福のひと時だよ。とでも言いたげな笑みを向けてきたため、まるで蛇に睨まれた蛙のような居心地の悪さを感じたルルーシュの全身には一瞬で鳥肌が立った。

「胡散臭いうえに気味の悪い笑顔に騙される馬鹿な女と、ナナリーを一緒にしない方がいいぞ?」

突然聞こえた第三者の声に振り返ると、そこには額に包帯を巻いた新緑の髪の少女が表情を消して立っていた。黄金の瞳で探る様にシュナイゼルを見つめている。

「お前は・・・コードRの実験体!どうしてここに!」

クロヴィスは顔色を無くし立ち上った。

「・・・実験体?成程、クロヴィスがこそこそ研究しているという実験の被験者だね」

思わず口が滑ったのだろう、クロヴィスは青ざめた顔で言葉を詰まらせ、硬直し、そんな弟の姿をナナリーにやり込まれていたシュナイゼルは楽しげに見つめた。

「私の事はC.C.と呼べ。クロヴィス、私がここにいる理由が解らないか?お前たちが馬鹿な事をしでかしたせいで、ルルーシュとナナリーが危険な状態になったから、ここに来たんだよ」

確かな足取りで、かつかつと靴音を鳴らしながらルルーシュの傍に近づくと、開いていた隣の席に腰を下ろした。

「・・・お前、死んだんじゃなかったのか」

間違いなく額を撃たれて絶命してたはずの少女が平然と歩く姿に、ルルーシュは隣に座るナナリーを腕に抱きしめた。ギアスなどと言う異能を授けた女だから、この程度不思議な事ではないのかもしれないが・・・薄気味悪い。
この女が鬼や悪魔だったとしても、ナナリーは俺が守る。

「死んださ。私はお前の命の恩人だからな、この礼は・・・ピザ10枚は必要だな」
「・・・随分と軽い命だな」

呆れを含んでそう言うと、C.C.はぎろりと睨んできた。

「サイズはMじゃないぞ、Lだ」

いや、サイズの問題ではないのだがと思ったが、ルルーシュは口に出さなかった。
たったそれだけで命を拾えるなら安上がりだし、これ以上の要求を出されても困る。

「・・・わかった、それはあとで用意しよう」
「話が早いな」

にやりとC.C.は魔女の笑みを浮かべた。

「クロヴィス、こちらのお嬢さんは?実験体と言っていたようだが?」
「えーと、そのですね兄上、彼女は私が行っている医療関係の実験を」
「違うだろう、私の体を刻み、投薬やデータ取りをひたすらしていたじゃないか」

淡々と、C.C.は答えた。

「貴様!」

この後、どうなってもいいのかと言う思いも込めて、クロヴィスは睨みつけた。何せ不老不死の研究を極秘裏に行っていたのだ。
これがバレれば廃嫡。
ルルーシュとナナリーを守る事さえできなくなってしまう。

「私は嘘は嫌いだ」

だが、C.C.はきっぱりとそう答えた。

「ふむ、いい心がけだね。クロヴィス、嘘偽りなく語らなければ、彼女の口から聞くことになってしまうが・・・」

その方が不利なのではないかね?
シュナイゼルは楽しげに弟を追い詰めにかかった。

「シュナイゼルお兄様、この話で先ほどの質問を忘れると思ったら大間違いですからね?」

ナナリーは念のためそう釘を刺した。

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