学ビノ園 第11話


神聖ブリタニア帝国第二皇子にして宰相をも務めているシュナイゼルが、教師としてやってきた理由。
それは今の地位にいては知りえないだろう、国民感情を知るため。
未来を担う若者たちが抱えている不安や、国に対する不満を直接見聞きする機会を得、同時に彼らに自ら教鞭をふるう事で、国が今後どのようなアプローチを若者たちに向ければいいのかを見定めたいというものだった。
今回の騒ぎの中心人物でもある生徒会副会長ルルーシュ・ランペルージは、生徒会会長のミレイ・アッシュフォードの遠縁にあたる。嘗て貴族であったミレイはルルーシュと共に何度も皇宮に訪れていて、シュナイゼルとクロヴィスとは、チェスの手合わせもするほど交流を持っていた。
今回この学園を選んだ理由も、ミレイとルルーシュがいるから。
そして警備の薄い一般の学校に来たことで、シュナイゼルを狙う不穏分子が動き出す可能性があると計算し、ついでにこれらを一掃する作戦を決行した。
かつてより交流のあったルルーシュと、その親友スザクに一芝居打ってもらい、はたから見てもルルーシュとシュナイゼルは親しいと思わせた状態で、護衛たちの手の届かない場所へとルルーシュを移動させ、不穏分子が狙いやすいよう舞台を整えた。
そして計算通りルルーシュを人質にし、シュナイゼルを失脚させようと目論む不穏分子を一斉に引きずり出した。

・・・という、何度聞いても苦しすぎる説明がなされた。

だが、そんな苦し紛れの言い訳でも、あのロイヤルスマイルを浮かべ、堂々と話されてしまうと、ああそうだったんだ、シュナイゼル殿下の策だったのか、ルルーシュとスザクは事前に全てを知っていたのか、と言う流れになってしまう。
ミレイのお祭りに慣らされた学生たちは、シュナイゼルの作戦にミレイが加わっているに違いないと判断し、これもお祭りの一環と、深く追求することも無かった。
皇族バレしなくて胸を撫で下ろしたが、状況は何も好転していない。
学生たちや報道は誤魔化せたが、ブリタニアに生存を知られてしまった。
暗殺者はこれからどんどんやってくるだろう。
逃げ出したくても、護衛と言う名の監視が学園内外にいる。
ギアスを使えば逃げ出すのは簡単だが、生存が知られた以上逃げ出した先で秘密裏に始末され、行方不明扱いに、というパターンが嫌でも頭に思い浮かんだ。

「・・・どうするの?いくの?いかないの?」

学生服を着たスザクは、小首を傾げながら尋ねてきた。
隣に座るナナリーも、不安げにルルーシュを伺っている。
生存がばれた時点で、本来なら逃げの一手しかないのだが、その一手はもはや封じられているだろう。シュナイゼルとクロヴィスが敵である可能性はまだあるが、学園内という人目につきやすい場所で馬鹿な手は打たない・・・はずだ。
すでに馬鹿な手を打って騒ぎを起こした事はこの際忘れて、これ以上はと信じたい。

「行くさ。こうなったら乗ってやろうじゃないか。大体、二人の目的もまだ解っていない」

あの宰相が何の目的も無く、ただ弟と妹に会いたいというだけでこんなバカげたことをする筈がない・・・・と思っているのはルルーシュ唯一人で、周りの人間はジュナイゼルはルルーシュに会って、構い倒したいという理由だけでやってきたんだろうと結論を出していた。
当然あの二人が暗殺者を、なんて考えるだけ無駄で、ルルーシュとナナリーを餌に引き寄せられた不穏分子は、二人に気づかれないよう消し去るに違い居ない。
あの二人はまちがいなく・・・重度のブラコンだった。
ルルーシュがナナリーを溺愛しているのと同じで、あの二人もルルーシュを溺愛している。理由は解らないが、それだけは傍から見ても解った。
・・・ルルーシュはきっと認めないだろうが。

「咲世子、C.C.、ナナリーの事を頼む」
「かしこまりました」
「私を使う対価は高いぞ」
「昼食は咲世子手作りの絶品ピザだ」
「よし、任せておけ」

これでナナリーの方は大丈夫だ。

「スザク、傷は痛むか?」
「大丈夫だよこのぐらい。君を抱えて走るぐらいなら訳ないよ」
「もう抱えなくていい!全くお前は・・・」

呆れたようにルルーシュは言ったが、その顔には隠し切れない喜びが滲み出ていた。撃たれはしたが、スザクは後遺症が残ることもなく、こうして再び元気な笑顔を向けてくれている。立って歩き、人一人抱えて動くことも可能なまでに回復した。
・・・これを喜ぶなという方が無理だ。

「よし、いくか」

全員が力強く頷く。
ルルーシュ、ナナリー、スザクの3人は、あのシュナイゼルの待つ学園へ向かった。

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