学ビノ園 第12話


シュナイゼルとクロヴィスが学園にやってきたのは一昨日。昨日は学園内外、特に報道陣への説明などに充てられたため休校となり、今日から通常通りの学園生活が戻ってきた。とはいえ、やはりあんな騒ぎがあった後だ。学生や教職員が遠巻きにこちらを見て、ひそひそと噂話をしてい姿が視界の端に引っ掛かる。
その姿は皇宮で悪い噂を流していた貴族の姿と重なり、ルルーシュはすこぶる機嫌が悪かったが、学校なんて小学校以来だから楽しみだと、子供のようにキラキラと目を輝かせてはしゃぐスザクのおかげで平静を保つ事が出来た。
そんなスザクと共に教室へ入ると、既に登校していたクラスメイト達が一斉にルルーシュとスザクへ視線を向けた。
まるで珍獣を見るような目だなと、思わず眉の寄ったルルーシュとは違い、スザクはこの場の空気に気づかないのか、ニコニコと楽しげな表情のまま、先日ルルーシュが座っていた席の方へ進んでいった。
ルルーシュの隣が空いていたため、「お前の席はここだ」と言うと「やった、ルルーシュの隣だ!」と、嬉しそうに笑いながら席についた。そんなスザクを見ていると、自然に顔が綻ぶ。そういえば、子供の頃、スザクといると嫌な気分はすぐに消し飛んでいたのを思い出した。まさかその効果が今も健在とは恐れいった。

「おっはよう、ルルーシュ!なあなあ、小さい頃皇宮に出入りしてたってホントかよ!」

席についた二人に、早速話しかけてきたのはリヴァル。

「おはよう、ルル!他の皇族の方とも顔見知りって事だよね!?」

と、シャーリーも続いてやってきた。
いつもの笑顔で尋ねてきたのでルルーシュもいつも通り笑顔を浮かべる事が出来た。

「ああ、会長が・・・いや、理事長が、よく俺と会長を連れて皇宮に行っていたんだ。その時に、シュナイゼル殿下とクロヴィス殿下とは、何度か顔を合わせていた」

ルルーシュとミレイぐらいの年齢の皇子、皇女が多いため、子供の相手は子供にさせようという事で、連れて行ってた・・・という設定になっている。
実際にミレイはルーベンと共にルルーシュのいるアリエスへ来ていたから、全てが嘘と言うわけではない。

「やっぱホントなのかよー!殿下たちとチェスもやったってのもホントか!?」
「ああ、俺は殿下たちからチェスの基本を学んだんだ」

まだ幼いルルーシュに、チェスの基本を教えたのはシュナイゼル。同じくシュナイゼルに基本を教わった兄クロヴィスとも何度となく対戦し、全て勝っていたが、シュナイゼルには一度も勝てなかった。

「うわー、じゃあルルーシュは、あのシュナイゼル殿下の弟子ってことかよ!?」

プロにさえ勝つというシュナイゼルの弟子。「どーりで強いわけだよな」と納得したような、どこか悔しいような顔で頷いていた。

「弟子というほどじゃないさ。何度か手合わせをしくださっただけだよ。結局1度も勝てなかったけどな」
「ルルーシュが勝てないって、シュナイゼル殿下はどれだけ強いんだよ」

リヴァルが知る限りルルーシュは負けなしだ。
そのルルーシュが1度も勝てない相手。

「と言っても、俺が10歳になる年までの話で、それ以降はお会いしていなかったよ」

だから今勝負をすればどうなるかは解らない。

「そうなのか?」
「アッシュフォードが貴族だった頃の話だからな。爵位を失って既に7年だ」

あ、そうか。と、リヴァルはばつの悪い顔をして頭をかいた。
アッシュフォードがエリア11との戦争の前に爵位を剥奪された事は、学園の誰もが知っている事だった。
貴族と言う地位が亡くなれば、皇族とのつながりも消え去る。

「でもいいな。本物のお姫様も直接見てたんだよね、ルルは」

テレビなどで見る皇族は、きらびやかな皇族服を身に纏い、誰もが美しく優雅で気品に溢れていて、まさに理想のお姫様で王子様だった。一度でもいいから、あんな方達と同じ世界を体験したい。シャーリーも例に漏れず、うっとりとした表情で妄想を始めていた。きっと夢の様な世界を思い描いているのだろうが、皇宮はそんな綺麗な場所ではない。この話を終わらせようとルルーシュは、話題を変えることにした。

「ああ、そうだ。皆に紹介しないとな・・・こいつはスザク。俺の幼馴染だ」

ルルーシュに皇族の話を聞かなきゃ、という思いが頭を占めていたため、視界にも入っていなかったのだろう。今はじめてそこに一昨日乱入してきたあの男子生徒がいることに気がついた二人は、面白いほど驚き、うろたえていた。
完全に蚊帳の外にされていたスザクだが、相変わらずニコニコといい笑顔だ。

「え?イ・・・えーと、幼馴染?」

イレブンが?と思わず言いそうになったが、リヴァルは慌てて言い直した。

「ああ。ブリタニア軍人で、クロヴィス殿下の直属だが、今後シュナイゼル殿下の直轄機関にも配属になる事が決まっている」

皇族二人が後ろ盾だという事を、クラスの全員に聞こえるように言った。
イレブンと言うだけで迫害の対象にされかねないが、皇族の息がかかっている以上無碍に扱う事は出来ないだろう。
あの二人の権威をかさに着ているようで腹立たしいが、今後の事を考えても、スザクが奇異な目で見られることなく自由に動ける状態にはしておくべきだ。

「殿下たちの部下って、すごいな。俺リヴァル。リヴァル・カルデモンド。ルルーシュと同じ生徒会の役員で書記をしてる」

驚きはしたが、変に改まることなくリヴァルはスザクに手を差し出した。 スザクはにっこりと笑いながらその手を握る。

「枢木スザクです、よろしく」
「私シャーリー、宜しくねスザク君」
「よろしく」

生徒会役員との顔合わせも無事終えた時、予鈴が鳴り響いた。

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