学ビノ園 第15話


もう疲れたと授業をエスケープしたルルーシュと、付き合わされたスザクは現在屋上にいた。

『ルルーシュー・ランペルージは至急教室に戻りなさい。歴史の授業の時間だよ』

聞こえてきた放送は男の声だった。
この学園の教師のものでも、シュナイゼルのものでも、ましてや学生のものでもない。気づきたくなかった現実を前に、ルルーシュは頭を抱えた

「・・・っ、間違いなくオデュッセウス兄上の声だ」

どうやら長兄である神聖ブリタニア帝国第一皇子まで教師としてやってきたらしい。何だこの状況はと、二人揃って深く息を吐いた。

「ねえルルーシュ」

青空を見上げながら、スザクはどこか達観したような笑顔を浮かべていた。

「なんだ?」
「聞きたい事があるんだけど」
「・・・なんだ?」
「クロヴィス殿下は美術、コーネリア皇女殿下は体育、シュナイゼル殿下は担任で数学他色々、今回はオデュッセウス殿下で歴史みたいだね」
「・・・そうだな」
「君の兄弟って、何人いたっけ・・・」
「・・・俺は男兄弟で11番目だ」

最低でも上に10人いる。
そのうち3人が今この学園内にいる。
ルルーシュの生存が皇室に知れ渡ったのは間違いないのだが、何故か皇族兄弟は教師としてアッシュフォードにやってきた。
この調子でいけば、まだまだ増える可能性がある。
・・・考えたくない事態だ。

「何でこんなことに・・・」

ルルーシュは頭を抱えて呻いた。

「よく解らないけど、君とナナリーがまた姿を消さないためには、教師として学園に来ないといけない・・・って思ってるみたいだよね」

皇族として来たらルルーシュとナナリーは姿を消す。
二人の命を狙っている者がいることもはっきりした。
その者たちから逃げるためにも、また死を偽装しかねない。
だが、シュナイゼルが教師としてやってきても二人は逃げなかった。
ならば自分たちも・・・という考えらしい。
こんなことならさっさと逃げるんだったとルルーシュはますます頭を抱えた。
幸いと言うべきか、全員ルルーシュの教師としてやってくるが、ナナリーには手を出していない。ナナリーに手を出した時点でルルーシュがブチ切れるのが解っているからなのか、他に理由があるからなのかは解らないが、少なくても咲世子とC.C.から緊急連絡は入って無かった。

「このままでは駄目だ。皇族が集まっている時点でテロの標的になる可能性も高いし、何より俺はこれ以上あいつらに関わりたくない」

きっぱりと断言したルルーシュに、言うと思ったよとスザクは返した。

「でもどうするのさ?君の生存は知られてしまった。逃げるのも難しいんだろ?」
「解っている。解っているが・・・」

頭を抱えて悩むルルーシュの頭を、よしよしとスザクは撫でた。
このまま害がないのであれば様子を伺うのが一番だけど、もしルルーシュとナナリーに害が及ぶようなら、二人を連れて逃げるしかないよね。と、スザクは腹をくくっていた。
その時、授業中だというのに校内放送を告げる音が鳴り響いた。

『ルルーシュ・ランペルージ。今すぐ、保健室に来るように』

それは女性の声だった。

「・・・誰?」
「恐らく、ギネヴィア姉上だ」

長女の。

「・・・逃げよう、ルルーシュ」

これ、どう考えてもキリが無いよ。
ってかもう怖い。
ブリタニア皇族集まり過ぎ。と、スザクは若干涙目だ。
テロリストなら大喜びで襲撃してくる状況。
こんな場所で愛する二人を守るのは厳しすぎる。

「そうだな、逃げるか」

ルルーシュはどこか吹っ切れたように顔をあげた。

「君と僕、二人揃って出来ない事は無いよ」
「そうだな、俺達が揃えば不可能など無い」
きっとナナリーと三人で逃げ切れる。
だって、これ以上関わり合いたくない。
ブリタニア皇族怖い。
二人はこっそりとクラブハウスへ移動を始めた。

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