学ビノ園 第17話


「えーと、いまのって・・・」
「デバガメしてた人たちが、今の話を報告しに行ったんじゃないかしら?」

ようやく静かになった廊下の方を見ながら、ミレイはあっさりと答えた。

「今の話って、ルルーシュ君とナナリーちゃんが、生贄に送られた話?」
「そう。当事者しか知らない情報ってあるじゃない。しかも皇帝にとっては不利な情報だから、絶対に皇室の方たちの耳には入らないのよね」

ミレイは肩をすくめてそう言った。
そう、ルルーシュがあの謁見の間で何を言われたのかは皇族兄弟も知っているだろうが、その後の扱いがどうだったのかまでは知るはずがないのだ。
謁見の間での暴挙だから、皇帝もルルーシュに対してきつく当たったのだろうと考えていただろうが、実際はそれ以上の扱いを皇帝は行っていた。
それを、ようやく皇族兄弟は知ることになったのだ。

「っていいんですか会長、そんな話聞かれちゃって!」

皇帝が隠していた話って事じゃないですか!と、リヴァルは慌てた。

「いいのよ」

ミレイはあっさりと笑顔で答えると、携帯電話を取り出しどこかに連絡を取った。



「ナナリー様、ミレイ様より連絡が入りました」
「予定通りのようですね」

咲世子の報告に、ナナリーはにっこりとほほ笑んだ。
ナナリーとルルーシュの携帯は、自分たちの居場所を知られかねないため、電源を落とした状態でいるが、シュナイゼルとクロヴィスがやってきたその日のうちにミレイが用意した携帯を咲世子は預かっていた。
ミレイは失踪に驚いた側にいるが、実は共犯者だ。
もちろんナナリー達がどこにいるかも知っている。

「予定通りって?」

ナナリーと咲世子のやり取りが解らず、スザクは首を傾げた。

「ミレイさんがさり気なく、私たちが日本に送られた時のお話を、シュナイゼルお兄様たちのお耳に入るようにしてくださったんです」
「7年前の話って事?」

何で今更?と、スザクは首を傾げた。
ちなみに今いるのはアッシュフォードの別荘で、スザク達はリビングで寛いでいた。
ルルーシュは連日の気疲れでいまだ夢の住人だ。

「そうです。シュナイゼルお兄様たちは、お兄様がお父様に反抗し、日本に送られたという話まではご存知ですが、その後の私たちの扱いは知らないはずですから、私たちが見捨てられた事をそれとなく伝えていただいたんです」

碌な護衛も、身の回りの世話をする者さえいなかった状況を兄も姉も知らない。
どうして戦争で死んだことになったのか、そもそも戦争で死ぬとはどういう事なのか一度考える機会を与えたのだ。
ナナリーは紅茶を一口飲むと、お兄様には内緒ですよ?と可愛らしく言った。

「ルルーシュは知らないんだ」

大丈夫なんだろうか?と、スザクは眉を寄せた。

「まあ、問題は無いだろう。ルルーシュほどではないが、ナナリーも頭はいいからな」

目が見えない事がハンデになってその才能はあまり伸ばせていないが。と、C.C.はピザを齧ると、スッとその瞳を楽しげに細めた。

「で?どうするつもりだナナリー」

ナナリーは暫く思案した後、C.C.の方へと顔を向けた。

「C.C.さんはお母様のご友人だったとか。お声は若く感じられますが、それなりのお年と考えてもよろしいのでしょうか?」

確認するようにナナリーは尋ねた。声の様子からしてもまだ10代に聞こえるのに、7年前の段階で母と友人だったというのだ。あの母が幼い子供を友人と呼ぶとも思えない。

「女性に年齢を聞くのは失礼だと言いたいところだが、私は既に自分が何歳なのか覚えていない。少なくてもお前の両親よりも、祖父や曾祖父よりもずっと上だよ」

その答えに、ナナリーだけではなくスザクと咲世子も驚きの声をあげた。
目の見えないナナリーには解らないが、見た目は10代半ばで、ルルーシュよりも年下、ナナリーと同じぐらいの少女だから、若づくりをしているとしても、せいぜい20台だと思っていたのだ。

「・・・そうでしたか、お母様のご友人と言う事はペンドラゴンの宮殿にもいらしたのですか?」
「ああ、暫く住んでいた。お前とルルーシュが産まれる前は、マリアンヌと共にアリエスにいたし、その後は別の住居が与えられていたよ。・・・だがそれを知ってどうするつもりだナナリー」

ブリタニアの皇族と深いかかわりがあったとあっさりと白状したC.C.の言葉に一瞬驚いたものの、ナナリーはその言葉を信じることにした。

「ではご存知かと思いますが、ブリタニアの皇族は全員シスコンでブラコンなんです」

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