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「なるほどねぇ、異国の桜桃の君が一人さびしくあの山にいるから、あんたの体に接ぎ木して、こっちに呼びたい訳ね」 納得納得と言う顔で、カレンは頷いた。 いつの頃からかスザクはあの山に通い始めていた。何か楽しい事でもあるのかと後をつけようと試みたこともあったが、まんまと撒かれてしまい結局謎のままだった。 友達になった異国の精霊と遊ぶため。 しかもその友達はあの山で一人ぼっちでいる。 乱暴者で俺様なスザクだが、その根は優しい。 だからこそ、あの嵐の日もその友達が気になって仕方がなかったのだろう。 それはとてもスザクらしい理由だった。 納得顔のカレンの手にはルルーシュの枝。 甘い香りが気に言ったカレンは、時折枝の香りを楽しんでいた。 結託した女二人はスザクには勝てない強さがあり、結局洗いざらい白状する羽目になった上に、カレンにまで枝を奪われたのだ。 最悪だと、スザクは胸の内で呟いた。 「確かに、古来より精霊の延命を目的として接ぎ木を行う事はありましたが、スザクだけでは無く相手も精霊、しかも異国のとなると接ぎ木は難しいかもしれませんわね」 「・・・そうなのか?」 「本来、接ぎ木をしての延命は、精霊の宿ってない木をつかうんですの。普通の木に精霊の宿った木の枝、つまりその体の一部を接ぎ木することで、本体である木が死を迎えた時に、そこに宿っていた精霊は接ぎ木した枝に引かれ、その木に宿るというやり方ですもの」 既に精霊であるスザクが宿っている木に、となると話は別。 「とはいえ、全く前例のない話ではないですわ。ですがその場合は、同種の木や家族の木で行われていたと聞きます」 異国の木、それも互いに精霊だと認識できないほど掛け離れた種。 どう考えても難しいだろう。 「・・・でも、あいつひょろっこいし、今回の台風は大丈夫だったけど、次は解らないだろ。だから無理かもしれないけどやるんだ」 「それなら、その辺の精霊が宿ってない木に呼べばいいんじゃない?」 ここは確かに多くの精霊が集まっている場所ではあるが、全部に宿っているわけではない。宿っていない木の方が明らかに多いのだから、その中でも根がしっかりした丈夫で病気になりにくい木を選んで、そちらに接ぎ木する方がいいはずだ。 だがカレンの提案に、スザクは嫌そうに顔を歪めた。 「あいつは俺に木に宿すって決めたんだ」 じゃなきゃ最初から他の木でやってる。 絶対に自分の木に宿すんだと断言するスザクに、カレンとカグヤは息を吐いた。スザクは多少性格に難はあるが元気で明るいことから他の精霊にも人気があり、友人も多い。ここ最近スザクがここを離れあちらの山までいっていることに不満を感じている精霊は少なくない。だがそれはこちら側の感情であってスザクは違う。スザクから見れば、本当に友達と呼べる相手はいないのだ。 ようやく手に入れた友達を自分の近くに置きたいし、他の誰かが自分より親しくするのも嫌なのだろう。だから自分と同じ木に宿して独占したいと思っているのだ。 スザクは乱暴者で俺様で我儘で独占欲が強い事を知っている女性二人は仕方ないわねと互いに顔を見合わせた。 「言うと思ったわよ、あんたホントに頑固よね。まあ、それだけ枝があるんだから、やれる事はやってみましょ。それにその桜桃の君もこっちに来たいって言ったんでしょ?」 一人で気の遠くなる時間を生きるのは辛く苦しいだろう。 それならば裏技的なやり方だが、接ぎ木をして上手くスザクに癒着させたあと本体をどうにかし、桜桃の君をこちら側に誘導するのもありだとは思う。女性二人は協力の意思を示したのだが、スザクは眉を寄せて口を閉ざした。 「・・・・」 「スザク?」 「もしかしてあんた・・・相手の許可なくやってるの?」 嫌な予感がして尋ねると、スザクはプイと顔をそらした。 「あんたねぇ・・・」 「成功するかも解らないし、俺は別にあいつの木を切り倒したい訳じゃない。念のため、準備をしたいだけだ」 万が一枯れた時に移動する場所を用意したいだけ。 何もしなければ、万が一の時は二度と会えなくなる。 あいつの所には今まで通り通うから寂しいなんて思わせない。 だから言う必要はない。 そう断言されてしまい、女性二人は保険なら仕方がないかと、相手に知らせないままの状態で接ぎ木の手伝いをする事にした。 |