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ブリタニア教団正面玄関のすぐ傍にあるフロントに、金髪の美丈夫がロイヤルスマイルを浮かべこちらを見ていた。白を基調としたい服に身を包んだその人は、キラキラとした光の中に立っているかのような華やかさがあり、人工の明かりは彼に向って光を降り注いでいるようで、彼を照らし出すために据え付けられたのではと錯覚してしまう。 この教団本部は白を基調とした豪華な造りで、まるで中世のお城のようだった。そのせいか、この場に立つシュナイゼルは、まるでこの城の主のようにも見えた。 あるいは舞台の上に立つ役者のようにも見える。 そう、彼を取り巻く空気は普通とどこか違っていた。 初めて会った時からそうだった。 殺伐とした戦場に、汚れ一つない白の衣装で立っていたシュナイゼルを見た時には、場違いな空気にこれは夢かと本気で思ったものだ。「魔物の群れの中でよく無事にいられたものだ。君には素晴らしい才能がある。どうかな、ブリタニア教団でその才能を生かすつもりはないかい?」そう言って微笑んだシュナイゼルの姿を昨日の事のように覚えている。その後受けたテストでいい成績を出したらしく、他の部隊ではなくシュナイゼルの直属部隊へと配置された。 あの日、全てを無くしたスザクにとって、シュナイゼルは生きる場所とその術を与えてくれた恩人だった・・・のだが。 彼もまた人間ではなく、吸血鬼だったと知ったのはつい最近の事だ。 彼の持つ独特な空気は、それゆえに物だろう。 こんな夜中に動きまわる理由は、日中はこの建物内が光に溢れているから。 吸血鬼が苦手とする太陽の光が降り注ぐ場所だからだ。 だが、日が落ちてしまえば、魔物と戦う唯一の組織と言われているこのブリタニア教団内を、こうして何食わぬ顔で堂々と魔物が徘徊する。そういえば、ロイドがあの部屋を出るのもいつも日が落ちてからだったなと思い出す。 「久しぶりだね、少し大きくなったんじゃないかな?」 「シュナイゼルさん、今朝お会いしましたよ?」 エリア11の給湯室で。 「おや、そうだったかな?ああ、そうだ。君にプレゼントを買ってね」 「僕に、ですか?」 「君、持ってきてくれたまえ」 「はい、シュナイゼル様」 フロントの傍で待機していた体格のいい男性が、一礼した後奥の部屋から持ってきたのは、見るからに重そうな段ボールだった。かなり筋肉質なこの男性でさえ苦労しているのだから、相当重いのだろう。 「・・・ありがとうございます」 差し出されたそれに手を伸ばし、受け取る。 ・・・重い。 持てないほどではないが、箱の大きさ以上に重い。 「・・・持てるんだね、君は」 「え?あ、はい。このぐらいなら」 「流石だね。この倍の重さは必要だったかな?」 「え?」 「いや、なんでもない。それより、時間はあるかな?」 「はい、大丈夫ですが」 「では、ついて来なさい」 ロイヤルスマイルを浮かべたままシュナイゼルは、すたすたと歩き出したので、スザクもまた荷物を抱えたままその後に続いた。各部署に移動する階段とエレベーターは入口から向かって左側にあるが、シュナイゼルが向かったのは右側で、右側のエレベーター横の階段を上って行った。 右側の階段を登った先にあるのは飲食店街だ。2階はどれも庶民向けの店で居酒屋なんかもある。スザクも何度か利用した事があるが、異国の人間は噂話の的になり肩身が狭い為普段は使わない。そして、3階はシュナイゼルなどが利用する高級店。 予想通り、シュナイゼルは3階まで階段で上って行った。 店内に入ると、ウエイターはシュナイゼルに一礼した後スザクを見、僅かに不愉快そうな表情を浮かべた。 「お客様、そのような荷物を持っての入店はご遠慮願います」 大きな段ボールを抱えて入る店ではないし、22時を過ぎていたこともあり、Tシャツにジーンズというラフな格好になっていたのだ。ドレスコードのある店に入る恰好ではないことぐらい、スザクにだってわかる。 「ああ、そうだったね。スザク君、一度その荷物はフロントに預けてきなさい」 「はい、では着替えてから戻ってきます」 「いや、そのままで構わない。問題は、無いね?」 シュナイゼルがウエイターにそう聞くと、相手はNOとは言えず、「はい、大丈夫でございます」と頭を下げた。とはいえ、いくら大丈夫でも、教団の要人が私用に、あるいは外交の場として使用するこの場所に、Tシャツとジーンズなんてどう考えても浮く。せめて教団の制服を着てこなければスザクが恥をかく。 だが、シュナイゼルがそれでいいと言った以上、着替えてくるわけにもいかない。 「私は席で待っているから、すぐにきなさい」 「はい」 きっと急ぎの用事か、忙しい時間の合間をぬって、少しでも話をしようと誘ってくれたんだ。と好意的に受け止めたスザクは、笑顔で頷いた。 ************ シュナイゼルは親友スザクが嫌いです。 なので、そっくりな特派スザクも嫌いです。 嫌がらせに特派スザクは残念ながら気づいてないので、シュナイゼルは馬鹿に嫌がらせは通じないのかな?と本気で思ってます。 |