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突然、室内に絶叫が響き渡った。 「あああああ!僕のピザは!?」 「ん?ああ、忘れて全部食べてしまったな、ごちそうさまでした」 空になった皿を前に、C.C.は両手を合わせて頭を下げた。 そういえば、ゴミ捨てに行かせる口実に1切れやると言っていた気がするが、つい忘れてしまったのだから、しかたのないことだ。そもそもこの至高のピザを食べ始めたら、それこそ思考が吹っ飛んで夢中になってしまうのだから私は悪くない。 「ちょっ、酷いよC.C.!!」 「仕方がないだろう、もう私の腹の中だ。美味かったぞ?」 「知ってるよ!美味しいに決まってる!僕のピザ返せ!」 くれるって言ったのに! 「つい美味くて手が止まらなかった。これは美味すぎる至高のピザを作ったL.L.の責任であって、私のせいではないぞ?」 「どう考えても君のせいだろ!」 いつもは大人しいスザクが、噛みつかんばかりの勢いでC.C.に迫っていたので、「食べ物の恨みは怖いよね~」と、言いながらロイドはコーヒーを口にし、セシルは「お腹が空いているのね。何かお夜食を作ろうかしら?」と時計を見ると既に24時を回っていて、普段なら就寝している時間だった。 「そうガミガミ言うな。すでに失われたのだから、なにを言ったところでもう戻らないことぐらいわかるだろう。そうだな、明日分けてやるよ」 覚えていたら。 「嘘ばっかり」 明日になったら、どうせ「まだ言うのか、しつこい男だな」とか言ってくれないくせに。と、スザクは頬を膨らませた。L.L.のピザは、あの屋敷にいた時に食べたきりだ。久しぶりに食べられると思って急いで戻ったのにと、スザクは若干涙目になっていた。 「なんだ、また何かあったのか?」 随分騒がしいが。と、奥の部屋から出てきたのはL.L.だった。 「L.L.聞いてよ!C.C.がピザを1切れ僕にくれるって言ったのに、全部食べちゃったんだ!」 「お、おい!待て枢木!」 告げ口するな!と、C.C.は慌てて声を上げた。まさかこんなくだらない争いにL.L.を巻き込むと思わなかったのだ。しかも泣きそうな顔で。 拙い、これは拙い。 L.L.はこの手の顔のこの表情にものすごく弱い。 間違いなく叱られる。 「・・・C.C.、子供相手に意地悪するな」 躾るように叱るL.L.の言葉に、C.C.とスザクは驚き猛抗議した。 「意地悪などしていない!つい全部食べてしまっただけだ!」 美味しすぎるのが悪い! 「僕は子供じゃない!そこは訂正してL.L.!」 確かに生きてる時間は君たちより短いけど!子供扱いしないで!! こういう時だけ息が合うなとL.L.は小さく笑った。 「ピザ絡みなら丁度いい。枢木、まだ食べれるならこれを頼む」 L.L.が差し出してきた手の上には皿。 その上にはピザが乗っていた。 「ピザだ!」 やったー!と、スザクは大げさなほど喜んだ。 「おいL.L.!私のピザだぞ!何で焼いてるんだ!」 「つい新しいストック分を作ってしまったから、古い方は処分したかったんだよ。今、もう1枚焼いているから、お前も食べたらいい。どうせまだ食べれるだろ?」 元々C.C.なら食べるだろうと持ってきたものだ。 人間のスザクがこんな夜遅くに食べるのは体に良くないが、今日ぐらいいいだろう。 「くっ、し、仕方ない」 自分も食べれると解った途端、C.C.は大人しくなった。 「セシルとロイドとも分けて食べるんだぞ」 その言葉に絶望し、C.C.は、私のピザなのにと涙目になったが、ここでNOといえば自分は食べれなくなることは明白だったので、頷くしか無かった。 昔の面影など欠片も無い幼い子供のような反応に、やれやれ、餌付けに成功した時は喜んだが、ここまで執着するとは予想外だなとL.L.は苦笑した。だが、まあ、手作りピザで丸く収まるのだから安い魔女だ。 「私のピザなのに!私の!」 仕方ないと諦めているが、文句は口を吐く。 「俺のだ。俺が作って焼いてるんだから、俺のピザだ。誰にどう食べさせようと文句は言わせない。ほら、枢木」 「やった!ありがとうL.L.!」 目の前に置かれたピザにスザクは大喜びし、C.C.は絶望したような顔をしたが、L.L.は気にもしなかった。今焼いている分はチーズ増々にしているから、お前の分だけ特別仕様だと言えばそれで機嫌は戻るだろう。 「・・・・っ!今日だけだからな!」 C.C.は絞りだすようにいった。 「いただきまーす!」 そんな言葉は完全無視し、スザクは熱々のピザを頬張った。 「聞け枢木!私を無視するな!」 ぎゃんぎゃんと騒ぐC.C.は威嚇する猫のようだし、ハフハフと食べるスザクは機嫌のいい犬のようだと、セシルは笑った。 |