|
はぐはぐ、あぐあぐと、とろりとトロけたチーズを頬張りながら、C.C.は至福の笑で口を動かし続けていた。ピザにはコーラというこだわりのある彼女のために、氷をたっぷり入れたコーラを差し出すと、美味しそうにゴクゴクと一気に飲み干した。 「あまり急いで飲むと腹をこわすぞ?」 「大丈夫だ、私の腹をお前と一緒にするな」 この程度でどうにかなるほど私の胃腸は弱くない。 グラスを突き出しコーラのおかわりを要求するので、仕方ないなとL.L.はコーラをなみなみと注いだ。その間にもC.C.の手と口は動き、はふはふ、ぱくぱくと美味しそうにピザを口に運ぶ。美味しそうだなと思っても、チーズ増々のピザは流石に手を出すのは不味いと悟ったスザクは、ごちそうさまでしたと手を合わせた。 今はまだC.C.より立場が弱いことは自覚している。 ここでこれ以上C.C.と争えば、L.L.はC.C.を連れて出て行くかもしれない。 それは避けなければならないし、美味しいピザはちゃんと食べられたのだから、これ以上わがままを言うのは得策ではない。 「それにしても、あのシュナイゼルが枢木を食事に誘ったのは意外だったな。あの男にも、少しは部下を労う気持ちがあったということか。ただ、枢木を誘うなら、せめて隣の店のほうが喜ばれただろうに。コース料理では量が少なくて、食べた気はしなかったんじゃないか?」 相手に合わせて店は選ぶものなのにな。 お茶をすすりながら言われた言葉に、C.C.は口の中のものを吹き出しかけ、盛大にむせた。「大丈夫ですかC.C.さん」と、セシルが背中をさすっている。一変した空気と、まわりから妙な視線を向けられ、L.L.は何だ?と首を傾げた。 「う~ん、量はともかく、シュナイゼルさんと食事っていうだけで緊張して、味が解らなかったよ」 だからむしろ量が少なくて助かったというか。 「L.L.様、それ本気で言ってます?」 「スザクくんも、本気で言ってるのかしら?」 「ケホケホッ!おいおい、天然が二人に増えたぞ、冗談だろう!?」 のほほんと会話を始めたL.L.とスザクに、3人は本気か!?と声を上げた。 ルルーシュはともかく、スザクはこの辺には敏いと思っていたのに! 「質問の意味がわからないんだが?」 本気か?とはどういうことだ?何に対していっているんだ? 「私はお前の言っている意味のほうがわからないんだが」 「何が理解らないというんだ?部下と交流をしたいと突如思い立ち行動に起こしたまでは評価するが、時間と場所をもう少し考えろと俺は言っている」 「あのシュナイゼルの話を聞いて、そんな答えを出したお前が恐ろしいよ」 正確には、読唇術を使い二人の会話を見て、だが。 「あれは、枢木と共通の会話が無いからだろう?とはいえ、あの男に名を呼ばれただけで鳥肌が立ち吐き気もしてきたから、今後話のネタにしないでもらいたいが」 過去のトラウマが怒涛のごとく脳裏に蘇ってきたからな。 「いや、あのなL.L.、いいか?あの男はな、別に枢木をねぎらってたわけではないぞ?ルルーシュの居所を知りたいから、枢木を利用しただけだ」 「は?」 「は?じゃない」 本気で解ってないのか?冗談だろう??とC..C.たちは頭を抱えた。 ああ、だがこの男、頭はいいのに変な所で鈍いのだ。 特に愛情関係には鈍感どころではないのだった。 「ああ、そういうことか。納得した!」 こちらは明るい声で、なるほどと頷いたスザク。 「枢木、お前も相当鈍いな」 あの流れとあの態度なら、それしか無いだろうが馬鹿め。 「でもさ、何で僕に聞いてきたんだろうね?ルルーシュって誰?あー、でもどこかで聞いたことがあるような気もするな、何かで見たんだっけ?えーと・・・」 「あーそれはきっと、C.C.のデータを見た時じゃないかなぁ?そのお名前も書かれていますしね」 ロイドの言葉に、「あー、そうかも」とスザクは笑顔で頷いた。 「で、誰なの?何で僕に聞いてきたのかな?」 「まあ、お前が鳥頭だということだけはよく解ったよ」 呆れたようにいうC.C.にスザクはムッとした表情を向けた。 「どういうこと?」 「いや、なんでもないよ。お前は知らないほうがいい」 だからこそ、回避できたのだから。 「なにそれ!?」 今後のためにも知らないほうがいい。それがスザクのためにもなるという判断からの言葉だったが、スザクは意地悪だと解釈し、眉を寄せてC.C.を睨みつけた。 「残念だがC.C.アレは奇跡的な回避であって、二度目はない。枢木、ルルーシュというのは俺の名前だ」 「そうなんだ・・・って、え!?L.L.の名前!?」 「ああ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアそれが本来の俺の名だ」 「え?え?ブリタニア?え?まって、じゃあシュナイゼルさんは、君が元気か聞いてきたの?え?あ!そうだ、君のことを溺愛してるって前言ってたから、あ、そうか、そういうことなんだ!」 あー!そうか!わかった!納得! 「だから鳥頭なんだよ」 「だって、知らなかったんだから仕方ないだろ」 「知らなくても普通は気づくんじゃないか?私と関係があり、お前の知る人物などコイツ以外にはいない。消去法で一発だ」 「あ!」 ほんとだ! 「大丈夫かこいつ」 「煩いなぁ。じゃあシュナイゼルさんは君がここにいる事に気づいているの?」 「今はまだ気づいていないだろうな。シュナイゼルらしくないミスだが、すぐに枢木に対し、俺が偽名を使っている可能性に気づくだろう。そのときにクロヴィスもこちらに加担していたと知られることになるが」 あのタイミングで来たクロヴィスに不信感を持っているはずだ。 緊急とは言え、最悪の事態が起きかねないあの場に自ら出向くなど本来ありえない。バトレーがついてきていたのだから尚更。普通に考えれば、人気のない場所で会うべきなのだから。 「クロ・・?ああ、あのシュナイゼルさんの弟?そういえば、騎士種にしたとかっていう話、何のことか解らなかったけど、アレって君の話だったの?君元人間だったってこと?」 僕と同じ、人間だったの?? 「あれは作り話だ。先の件でC.C.は黒髪の男と一緒に居たと報告されているし、近隣住人に聞けばその裏付けも取れる。だから、俺ではない別人を連れ歩いていた、という設定を作った。幸い俺の顔はあの屋敷周辺では割れていないからな、聞いて回った所で俺かどうか確定はできない」 「はーなるほど、そういうことなんだ?」 「ホントに理解できているのかお前」 「何となくは」 なんとなくなのかと、C.C.は呆れながら呟いた。 |