夜の住人 第29話


「シュナイゼルがギアスを持っていると、ロイドが言ったのか!?」
「ええ、ギアスって言ってたと思うけど?スザクに使われてるって」

聞き間違いしてる?とカレンは困惑していたが、最悪だと、C.C.は呻いた。
猫のアーサー、いやマリアンヌも渋い顔をしている。

「何よ、ギアスって」
「説明すれば長くなる」
「簡単にいえば、チャームよ」

C.C.が説明をめんどくさがったので、マリアンヌが答えた。

「チャーム?魅了ですか?」
「そう、私達吸血鬼が持つ能力一つなのは知ってるわね?対象の意識を支配し、自分に惚れさせるの。といっても、私達のチャームは淫魔ほど強力ではないけれど、それでもこちらに好意をもたせ、優位になるぐらいの効果があるわ」

吸血鬼のチャームは魔力をフェロモンに似た物質に変換し、相手を魅惑する。
同族相手には効果はないし、そもそも美形揃いだから、わざわざそんな能力使う必要がないので、そういえばそんな能力もあったな程度の代物だ。
魅惑すると言っても好感度を若干上げる程度で、淫魔のような強制力もない。

「・・・それって、ルルーシュはチャーム使いっぱなしってこと?」
「あいつのフェロモンだだ漏れは、チャームじゃないぞ?完全に天然だ」
「私も若い頃そうだったけど、あの子がチャームを使ったら奴隷を作れるわよ」

それでなくてもその美貌で周りは振り向く。ちょっと優しくし微笑めばそれだけで落ちる。そこにチャームなんてしたら、神のごとく崇め奉る狂信者集団が完成する。過去にそうやって逆ハーレムを作った経験のあるマリアンヌは、あれはすごいわよと言った。
今いる吸血鬼でそれをできるのはルルーシュぐらいだろう。
ユーフェミアも似たようなタイプだが、彼女は性の対象というより、最初から信仰の対象として崇められる。穢れなき聖女。吸血鬼という種とは相反するものだが、彼女は清らかな乙女である事を求められ、同時に善人であることを求められる。彼女の場合魅了と信仰の相性が悪いから、マリアンヌの時のような狂信者は作れないが。

「ギアスはそれの強化版だと考えていいわ。使用した対象に必ず愛される。おそらくスザクくんは、シュナイゼルに対して親愛を埋め込まれたんじゃないかしら?どんな愛でも、対象はこちらの言うことを何でも鵜呑みにし、疑うことのない従順な奴隷になるわ。善悪の概念もモラルも全て命令の前では無力。命令されればどんなに大切ない相手でも、守りたい相手だったとしてもでも笑顔で殺す。それが、ギアス」

命令を遂行し殺した後も、その命令が正しいと信じ続ける。

「なにそれ・・・」

怖い。それしか言えない。

「だが、いや、だからこそ、ルルーシュはシュナイゼルの手に堕ちた。枢木スザク本人に自覚はないが、最も危険な男に、自分が惚れた相手を差し出したわけだ」
「生きていたら、厄介だったわね」

スザクの能力はC.C.を通して知っている。
あれほどの才能を切り捨てるなんて普通はしないが、1刻たりとも傍に置きたく無いほど嫌っていたのだろう。私なら、嫌いな相手だからこそ最後まで無駄なく使うのだが。おそらくは、スザクという優秀な駒を切り捨てても惜しくないほど堅牢な城を築いたという自信もあるのだろう。

「私達にギアスは効かないが、カレンと咲世子は危ないな」
「吸血鬼には効かないの?」
「私には元々ギアスは効かない。ロイドとセシルが無事ということは、おそらくシュナイゼルは視界を介して発動するギアスを持っている。ナナリーは両目が見えず、マリアンヌは猫だ。だから問題ないと言うだけで吸血鬼であってもギアスは効く」
「それってやばいんじゃない?ルルーシュにギアスが効くってことでしょ?」

それって、シュナイゼルに恋愛感情を植え付けられたら終わりじゃない。いや、他の愛情でも命令に服従なら、喜んでシュナイゼルに身体を差し出してしまう。

「それも問題はない、別の理由でルルーシュには効かない。ロイドとセシルも事前に知っていれば防ぐ手立てがある。問題は教団内だな。下手をすれば全員ギアスを掛けられている」

ギアスがあるなら不安要素を残す必要がない。
絶対に自分に従う兵に変えている。
シュナイゼルに命じられたら、自爆もするギアス兵だ。
だが、この情報を知っているかどうかで戦局は大きく変わるだろう。
それにこちらには・・・ジェレミアがいる。
ギアスを無効化出来るキャンセラー持ちが。
ルルーシュが心配のあまり機械がショートし煙を噴いてるのは心配だが、おそらくジェレミアのキャンセラーの情報もあちらにはない。
閃光のマリアンヌと謳われたマリアンヌとジェレミア。
ジョーカーが2枚。
これを上手く生かせるかどうかだなとC.C.は天井を見上げた。

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