夜の住人 第31話


「さて、ようやく尽きたようだね」

ロイヤルスマイルを浮かべたシュナイゼルは、待っていたよと立ち上がった。
ルルーシュをここに捕らえてから半日近く続いていた膠着状態が、今終わる。
エナジーの消費の激しいブレイズルミナスを、出力を押さえピンポイントで使用し続けるという神業で持ちこたえてきたが、それが終わる。
カノンの振り下ろした剣は、空間に貼られたエナジーの壁に当たること無く、ランスロットに振り下ろされた。金属がぶつかる音があたりに響く。
やっと終わるわねと、半日素振りをしていたカノンは、嬉しげに笑った。こんな面倒な方法ではなく、一瞬で片付けられたものを。弟の我儘に付き合いたいと考えたシュナイゼルの命令とは言え、少々疲れた。肉体的にではなく、精神的に。早く全てを終わらせ、この哀れで美しい子猫を、主の手に渡せば暫くの間お役御免だ。奪還を試みるだろう魔女たちが来るまで、シュナイゼルはこの子猫を愛でるのだから、それを邪魔すればカノンであっても殺されかねない。
100年越しの思いを遂げるのを邪魔するものは誰であれ容赦はしないだろう。
可哀想に、とは思う。
何事にも執着しないと称されるシュナイゼルが唯一執着している子猫。
彼の言葉ではないが、これからは自分を人形だと考え生きていくことこそが、最も楽な生き方だろう。何も考えず、ただシュナイゼルの側で、シュナイゼルのために生きる。早くそれに気づき、楽になりなさい?と、もう終わりだというのにいまだ反抗の意思を崩さない哀れな子猫に笑いかけた。そして、切っ先が当たらないよう注意し、渾身の力を込めて剣を振り下ろす。守る力を失った無機質の機械など、それで終わりだ。
操作パネルは両断され、エナジー回路も切断する。

「・・・っ!」

凶刃の前に為す術なく破壊される。深々と埋め込まれた刃に、ばちばち、と電流が一瞬流れた後、ランスロットは完全に沈黙した。
その様子をモニターで見ていたロイドは「僕のランスロットがー!!」と、悲鳴を上げ転げ回った。ロイドの趣味をこれでもかと詰め込んだワンオフ機だ。時間もそうだが、お金だって、恐ろしいほどつぎ込んでいる。それが見るも無残に破壊された姿に、ロイドはむせび泣いた。

「そんな場合じゃありませんよ、ロイドさん」
「だって、だってセシルくん、僕のランスが!」
「新しいの、完成したじゃないですか」
「どっちも大事なランスロットなんだよっ!あああああっ!」
「ロイドさん!」

頭を抱え咽び泣くロイドを叱りつける。
今はランスロットよりもL.L.の身の安全のほうが優先事項だろうに。
ロイドの気持ちはわかる。セシルの趣味も山ほど詰め込んでいるのだから。あの状態では修理は厳しいかもしれないが、設計図も、今日までのデータも全て残っている。
資金さえあれば、同じものを作成することは可能だ。
壊れてしまったものより、今は大事なものがある。

「何で君、ランス壊されたのに平然としてるの!?ひどくない!?それに、あれは緊急時用のリードでもあるんだよ!?」
「首輪が動作をはじめれば、リードなしでも大丈夫じゃないですか?どのみち今はどちらも意味がありませんし」
「そうかもしれないけど!絶対じゃないでしょ!?だからもっとランスロットが壊れたこと悲しんでよ!!」
「わかりましたから、私だって腹は立ててますよ。それよりロイドさん」
「それよりって、酷いよセシルくん」
「最終防衛ライン突破しました」

ロイドの相手をしながらも指を動かし続けていたセシルの言葉に、取り乱していたロイドは、一瞬で冷静な科学者の顔に戻った。

「じゃあ、始めようか。あいつ、僕達を馬鹿にして放置してるけどさ、窮鼠猫を噛むって言葉を知らないんだろうね。まあ、噛み付くのは鼠じゃないけど」
「L.L.様を抑えれば、何も出来ないと思っているんですよ」
「何もしなかったら、僕達がL.L.様に噛みつかれちゃいますよ」

俺のことはいいから、シュナイゼルを抑えろ!って、あの人なら言いますからねぇ。
それに、ナナリー様やスザクくんのこともありますし。

「ロイドさん、口より手を動かしましょうか?」

にっこり笑顔のセシルに、わかってますよトロイドは答えた。

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