「はいはい、もうちょっとこっち。よしそこ、目線ここね」
詳しい話しはそこそこに、私はスザクに注文をつけつつ携帯で写真を撮りまくっていた。スザクから聞ける情報など、私にだってわかってる程度だろう。だから聞く必要はないし、聞くならルルーシュに直接聞くから今はいい。
今私がすべきことは、美人になって帰って来たルルーシュの寝顔を、色々な角度から撮る事だけ。もちろんスザクも一緒に写すし、私も中に入る。どーせルルーシュの事だから、今後寝顔を写す機会なんてそうそうないだろう。これはチャンスなのだ。
「ほんっと起きないわね」
気配を殺して家に入った意味が無かったと文句を言えば、この家いは私の匂いも強く残ってるし、気配もないから全然わらなかったとスザクは笑いながら言った。ああ、この会話は念のため小声でしている。だってあの頃と変わらないルルーシュの癖で、スザクをぎゅっと抱きしめて離れないのだ。まあ、スザクはそれを喜んでるし、問題があれば抜け出すだろう。
抱きしめている分自由はきかないが、二人の距離は近く写真も撮りやすいから良しとする。ちなみに部屋の電気は煌々と灯っている為、ルルーシュの顔は今はっきりと見えていた。
「あーもーほんっと美人になったわよね。肌も白くてきれいだし、すべすべだし。なんか悔しい!」
アップで映しても荒が一切ない。
若いからというのもあるが、同い年の私より間違いなく肌質は上だ。私も人より上だと羨ましがられていたのに。やっぱり、くやしい。
「なあカレン、その写真」
「後で印刷してあげるから」
そういうと「やった!」と喜びルルーシュに抱きついた。
かわいい!くそっ、こいつ可愛い!
当然、写真に残す。
あーもーうちの子たち可愛いわ!!
もちろん私も可愛い!
「あ、そうだ」
私はルルーシュの背中側の布団にもぐりこみ、ぴったりとくっつく。
一つの布団に三人は狭いがまあいいか。
「スザク映すわよー」
もらったけど使うことなくかばんに入れっぱなしだった自撮り棒が大活躍だ。自撮りなんて馬鹿じゃないの?って思ってたけど撤回する。自撮り楽しい。
「・・・なあカレン、これってルルーシュ怒るんじゃないか?」
これだけ写真をパシャパシャとって、今更それを聞くのか?と思ったが、スザクのことだ。今気づいたのだろう。
「怒るわね。いいじゃない別に」
「よくないだろ?」
「大丈夫よ、ルルーシュだもの」
文句を言うだろうが、この程度なら許してくれるし、消せとは言わない。ただ、誰にも見せるな誰にもやるなとは言われるだろう。三人で共有するだけならそれ以上は言わないに決まってる。
三人でくっついて寝ている写真を何枚かとる。
「ねえ、それよりも、ルルーシュやつれて見えない?」
肌はきれいだが、やせ過ぎているし、よくよく見れば顔色もいいとはいえない。これだけやって起きないと言う事は、それだけ疲労がたまっていると言う事かもしれない。
「・・・すっごく細いぞ。カレンより細い」
「え?ちょ、冗談でしょ!?」
横になった状態のまま、ルルーシュの背後から手を回す。
腰回り、足回り、腕。細い、細すぎる。筋肉がちょっとある程度だ。なにこれ細い。
「普通に細いなら羨ましいって言えるけど、これは違うわね」
顔だけでは解らなかったが、これはどう考えても不健康な細さだ。
「・・・もしかして、病気なのか?」
恐る恐るスザクが聞いてきた。
「それは本人に聞かなきゃ解らないわよ。大体、ルルーシュを捨てたくせに、自分たちの都合で連れ帰ったやつらよ。ちゃんとご飯食べてたかもわからないでしょ」
病気ではなく、栄養不足かもしれない。
これだけ身長が伸びているのに、ろくに食事を取っていなかったなら、やせ細っていてもおかしくは無いだろう。あいつらが、ルルーシュが大事に扱っていたとはとても思えない。目を閉じていてもわかるぐらいルルーシュは美形だから、私は別方面でも心配になる。その手の話は最近嫌というほど目にするから。主にマンガだけど。友達の女子とかがオススメだという本がそういうものばかりなのだ。
碌な情報も無いのに、想像だけで考え過ぎは良くない。
本人に聞こう。
「ふあ~、ねむくなっちゃった」
スザクを探しまわり、敵がいるかもと警戒して神経を擦り減らせ、安堵して楽しんで、そのうえ温かい布団。これはヤバい。
「俺も眠い」
おそらくスザクも同じだったのだろう。
だって間違いなく、私が来た時眠っていたから。
「おやすみ~、スザク」
「おやすみ、カレン」
すやすやと三人の寝息が聞こえるまで、1分もかからなかった。