オオカミの呼ぶ声2

第 6 話


「な、な、な、なんだこれは!!」

怒鳴り声で目が覚めた。
目を開けると、ルルーシュの顔が視界に入る。
起きるかな?と思ったが、これだけの声でも目が覚めることなく、すやすやと眠っていた。起こさないよう顔をあげると、ルルーシュとカレン越しに見えたのは、怒りで体を震わせているナオトだった。

「う~ん、うるさい・・・すうすう」

カレンはナオトの怒鳴りには慣れたもので、一瞬目を覚ましたがまたすぐ眠ってしまった。その時、ルルーシュの体を抱き枕のように抱きしめたので、ナオトの顔から血の気が引き、わなわなと唇が震えた。

「か、か、カレン!?な、何なんだその男はっ!誰なんだっ!お、俺はお前がそんな、こんなっ!!」

ぼろぼろと涙をこぼしながら訴えるナオトの姿は初めて見るもので、本人には悪いがちょっと面白い。とはいえ、疲れてるのか衰弱しているのか解らないが、ルルーシュは今寝ているのだ。起こされたら困る。

「ナオト、煩いぞ」

俺の声に、初めて視線がこちらを見た。
今までナオトの視界には、男と布団を共にする愛する妹の姿しか映っていなかったため、スザクを見て目を白黒させた。

「ま、ま、ま、まさかこの男っ!カレンだけじゃなくスザク君にまで!?な、なんてことをっっ!」

あーまずい。完全に頭に血が上ってる。
今にも飛びかかって来そうなナオトに俺は止まる様手を向けた。

「ナオト落ち着け」
「お、落ち着いていられるか!!」
「ルルーシュだ」
「この男は・・・!・・・・、・・・・え?」

一瞬言葉が理解できなかったのか、何か言いかけたが、次第に怒りが静まり、目を白黒させながら間のぬけた声をあげた。

「ルルーシュが帰って来たんだ」
「・・・!?」

もう少し解りやすく教えると、声が出ないほどびっくりし、俺とルルーシュを交互に見た。

「寝てるから、静かにしてくれ。もしかしたらどこか体が悪いのかもしれないんだ」

これだけ騒いでも無反応な姿に、今度は別の意味で顔色を悪くしたナオトは、音を消しながら近づいてきた。カレンには劣るが、気配と足音の消し方はうまい。ゆっくりと枕元に座り、ルルーシュの顔を伺った。

「・・・ルルーシュ、君か」
「おっきくなって匂いもちょっと変わったけど、ルルーシュだ」

俺が断言すると、ようやく信じたらしいナオトが、口元を緩めた。

「そうか、帰って来たんだな。でも、やつれてるように見えるんだが」
「カレンも言ってた。それに凄く細いぞ」
「細い?」
「腰もカレンより細い」

そう言うと、ナオトはびっくりと目を丸くした。
カレンは動きまわるからか、その辺の女子より筋肉もあるが、体が引き締まっているため腰回りは細い。それを女子たちはうらやましがってるぐらいだ。

「あっちでまともに食べさせてもらえなかったのか?・・・よし、カレンはまだ起きないだろうし、夕ご飯はこっちに用意しよう」

もういつものナオトに戻っていた。
この辺はほんとカレンとそっくりだ。
カレンも最初激怒していたが、ルルーシュだとわかったら即素に戻った。

「ルルーシュ起きるかな?」

早く起きて欲しいと思うが、疲れているならゆっくり寝て欲しいとも思う。

「晩御飯の時起こして、起きれるなら食べさせた方がいい。簡単に食べれるものにするよ。夜中に起きるかもしれないし、おにぎりとかの方がいいかな?あと、温かい飲み物が飲めるように電気ポットも用意して・・・スザク君、俺は一度帰る。母さん達と相談してから用意した方が良さそうだ。カレンは泊っていくだろうから、その荷物も母さんに頼まないとな」

すやすや眠るカレンの行動を良く理解しているナオトだから、任せておけば問題は無いだろう。

「あ、藤堂先生にも帰って来たって連絡してくれ」
「解った。藤堂さんと母さんたち以外にはここに来ないようにも言っておくよ」

皆会いたいだろうけど、疲れきってるから今は駄目だろう。
そう言いながらナオトは部屋を後にした。

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