オオカミの呼ぶ声2

第 10 話


「ほんっとうに起きたの?」
「嘘ついてどうするんだよ」

起きたというルルーシュは昨日と変わらず布団の中ですやすや寝ている。
嘘ではなく、それは夢か何かじゃないのかと疑い尋ねたが、起きたし一緒に風呂にも入ったのだと言う。だが、また寝てしまったのだとか。

「ほらみろ、着替えてるだろ」

スザクに言われて布団の下に収まっている体を見れば、確かに昨日まで着ていたシャツではない。ちゃんとパジャマを着ていた。スザクが着替えさせた・・・わけはないか。それなら初日にやってたはず。なら本当に起きたのだ。よかった。ちゃんと起きてご飯も食べて水も飲んだのだ。安心して思わず目が潤んでしまった。だって心配だったのだ。仕方ない。

「じゃあ、なんでまた起きないのよ?」

スザクの話では夜中、2時過ぎにルルーシュは目を覚ましたと言う。今は朝の7時30分。3時には寝たと言うから4時間は寝ているのにまた起きない。
今までさんざん寝てたのだから、起こせば起きるものではないのか?
これはどういう事だろう?
登校前に寄ったらルルーシュが起きたと若干興奮したスザクが教えてくれたが、昨日と変わらず起きない状態だ。布団をめくっても、これだけ周りで話をしていても、身体を揺すってもすやすやと眠っている。
うん?そういえば、一回起きたのにまたスザクを抱きしめてるの?それともスザクがそうしたの?まあいいか、ここは突っ込んだらめんどくさそうだ。写真だけはとっておこう。

「起きて水はどのぐらい飲んだの?」

一番心配なのは脱水症状。乾燥したこの時期だから水分補給が最優先。

「小さいペットボトル2本」

スザクの言う小さいペットボトルは500mlだから、あれを2本だと1Lか。思ったより飲んでいた。ずっと寝ていたから相当喉が渇いていたのだろう。それだけ飲めば十分だ。

「ご飯は?」
「冷蔵庫の」
「そう、ならいいわ」

念のため用意しておいて正解だった。食べて飲んだなら、まあ大丈夫だろう。顔色も昨日より良くなっている気がしなくもない。

「庭を散歩したり、風呂に入った時は元気だったのになぁ」
「庭にお風呂って、それが原因じゃないの?」

寝込むほど衰弱してた人間が、真冬の夜中に庭に出て体を冷やし、更にはシャワーではなくきっちりお風呂に入ったなら、せっかく回復した体力も尽きるだろう。馬鹿じゃないのかこの二人。
それにしても、相変わらず体力ないわねルルーシュ。

「まあいいわ。お昼は玉城が持ってくるって言ってたから。ルルーシュが起きたら、お風呂は我慢して外には出るなっていっといて」
「なんでだ?」
「また寝込まないためよ。いい?お風呂入りたいなら軽くシャワーで済ませるように言うのよ。お風呂って体力使うんだから。あと体を冷やさないこと。買い物が必要ならあんたが買いに走りなさいよ。あっ、もうこんな時間!私行くね。学校終わったらすぐ来るから」

まずい、つい夢中になって話していたが、時計を見ると全力で走らなければ間に合わない時間になっていた。まだ碌に除雪がされていない道を走るのは疲れるが、体力は有り余っている。まあ、行けるだろう。
スザクも時計を見て遅刻寸前だなと笑った。

「走って転ぶなよ」
「私が転ぶわけないでしょ」

一回でも転んだ事があるかと聞けば、人間の子供はよく転ぶからと返される。それはまあ否定はしないが、普通の子供の枠に私は入るのだろうか?

「いってきまーす」
「いってらっしゃい」

ぱたぱたと廊下を走り、きっちり玄関の施錠をしてから私は家を後にした。

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