オオカミの呼ぶ声2

第 12 話


「ルルーシュが家にいるなら、俺も学校を休む!」

堂々と宣言したスザクだが、当然そんな事は許されるはずも無く、藤堂のげんこつが飛び、ルルーシュにも叱りつけられ、私が引きずる形で登校した。
気持ちはわかるし、神様であるスザクが中学校に真面目に通わなければいけないかと言えば、実は通う必要なんて全くないのだが、それでも藤堂も桐原もカグヤもスザクがサボる事は許さない。
これから冬休みもあるし卒業はまだまだ先。
神様がその間たった一人の人の子と、学校にも行かずに一緒に過ごすなんて事になったら、まーためんどくさいのが湧きかねない。
スザクには悪いが、これもルルーシュを護るためなのだ。
そんなことをスザクに言えば、帰るのを諦めて授業を受け始めた。
私も昨夜の数時間だけでは全然話足りないから休みたい。
でも、私は人間の子供だからスザク以上にサボると怒られてしまう。
ルルーシュの話では、ナナリーとその世話係を日本に呼んだ後は、日本国籍を手に入れるつもりらしい。つまり、これから嫌と言うほど一緒に過ごせるのだ。それなのに、ここで我がまま言って叱られて、今後の自由を縛られる結果になるぐらいなら、はいはいと大人しく言う事を聞く方がいい。

授業中のスザクはそわそわしっぱなしで、ずっと窓の外、正確には家がある方向を見ている。私達のクラスは小学生の時から馴染みの面々なので、ルルーシュが戻ってきたことも知っている。先生方も知っているから、そわそわしているスザクに苦笑しながら授業を進めた。
ちいさな子供がそわそわしている姿はほほえましく、何よりルルーシュが戻ってきた事をみな喜んでいた。休み時間になるとみんながスザクにルルーシュの話を振る。スザクは嬉しそうにルルーシュの話をしていた。
スザクには悪いが、これも作戦。こうでもしないと、スザクは休み時間のたびに帰ろうとするだろうし、そのたびにルルーシュが叱り、学校に戻すという作業をしなければならなくなる。スザクの足があればここから家までは一瞬ではあるけれど、寝込んでるルルーシュの負担になる事は避けたいし、何より一回帰ったら絶対こいつは戻ってこない。ルルーシュが寝てたら添い寝するに決まってる。
だから帰ってルルーシュと話がしたいが、ルルーシュの話もしたいスザクの心理をついて、皆は質問攻めにするのだ。
こうすればスザクを引きとめられるし、みんなはルルーシュの話が聞けるから一石二鳥。私も楽しいから一石三鳥か。
そんな風にルルーシュの話で盛り上がっていたから気がつかなかったが、スザクと接点を持ちたいからと、休み時間ごとにやってくる生徒たちが今日は誰ひとりやってこなかった。


スザクとカレンのクラスは戻って来たルルーシュの話で持ちきりだったが、他のクラスでは別の話題で盛り上がっていたのだ。

「聞いた?枢木神社の藤堂さんの話」
「やっぱりそうなのか?」
「絶対そうだって。藤堂さんも隅におけないよな」
「前に仙波さんの後任予定の人来てただろ?その人ともいい感じだったって話だし、ああいう女性がタイプなんだろうなぁ」

藤堂に関する噂は瞬く間に広まっていった。その場面を目撃した生徒も面白がって尾ひれをつけはじめたため、話はどんどん大きくなる。彼らはやがて好奇心に負け、詳しい内容を知りたくなった。藤堂の話といえばスザクだろう。これはスザクと親しくなるチャンスだと考えた女子たちは、昼休みに入ってすぐに、スザクのいる教室にやって来た。
そしてその話を聞き、スザクとカレンは・・・いや、二人だけではなくこのクラスの面々は驚きの声をあげた。

「え?なにそれ?私知らないわよ!?」
「なんだよそれ?藤堂先生が結婚するって、誰が言ったんだ!?」

それは、藤堂が妻となる女性を連れてきたという寝耳に水な噂になっていた。

Page Top