オオカミの呼ぶ声2

第 17 話


「次はこれだ」

季節外れだが、満開のひまわりを連想させるような、キラキラと瞳を輝かせた笑顔のスザクが箱を渡してきた。・・・今度はどんなものが入っているのだろう。はっきり言って俺が使わないタイプの可愛らしい猫グッズばかりで、何を思ってこれを買ったのだろうと聞きたい気持ちもあるが、こんなに楽しそうなスザクを見てしまえば何も言えなくなる。開けると中から可愛らしい猫のマグカップが出てきた。俺の記憶違いでなければ、マグカップはこれで4個目だ。感想を聞きたいのか、すこし前のめりになりながらスザクがずっとこちらを見ている。・・・そうか、これを選んだのはスザクだな。

「可愛いな。だけどどうしてどれもこれも黒猫なんだ?」
「ルルーシュに似てるだろ?」
「俺に?」

黒髪だからか。なかなか安直だな。だが、どうして猫なのだろう。
次に渡された箱は先程より小さく、開けてみると入っていたのは黒猫型のキッチンタイマーだった。その次は黒い猫型のしゃもじだ。
次々と渡され、開封しているのは、去年までの誕生日とクリスマスプレゼントだと教えられた。居ない俺の分も毎年用意していたという。
プレゼントの山の大半が食器か調理器具で、ついで多いのは文房具関係。よくまあこれだけ黒猫グッズを集めたなと驚いた。
俺はみんなに返すものなど用意していない。それなのに、こんなにもらっていいのだろうか?いや、今は素直に受け取って、今度これらのお返しも兼ねて何か贈ることにしよう。
カレンとスザクからの物だけではなく、ナオトや玉城、藤堂や桐原、カグヤたちの物もあった。話を聞けば、枢木神社の氏子たちからもルーシュにと用意してきた物があったらしいが、それらは丁重にお断りしたという。大半の氏子は顔見知りで、昔懇意にしていた人もいるのだが、その人たちからも受け取ってしまうと、他の氏子たちもスザクに気に入られるために色々持ってきかねない。そうなると、それはルルーシュのためではなく、自分の利益のためにプレゼントを利用していることになる。あるいは悪意あるプレゼントを忍ばせてくる可能性もある。
知り合いだけ受け取れば差別だと騒がれるから、本当に親しい者だけというルールが出来たらしい。カミサマの友だちというだけでカレンも今までさんざん貢がれそうになったと言うから、一緒にカレンの方も規制したとか。
スザクが人里に降りてかなり経つのに、まだその手の騒動があるのかと呆れてしまうが、あしらい方を覚えたことで特に問題なく過ごせているようだ。
全部開けおわる頃には日も暮れてきていた。
プレゼント類はカレンがこまめに食器棚などに片付けていき、空箱は藤堂が片付けてくれたので、後片付けはすぐに終わった。

「しかし、すごい量だったな」
「だろ?気に入ったか!?」
「ああ、もちろんだ」

俺、選ぶの上手いだろ!と、自信満々に言うのでふわふわの髪をなでながら言えば、嬉しそうにニコニコと笑った。
とはいえ、可愛すぎるものばかりでどう使えばいいか悩む。

「よし!俺、これにお茶淹れてくる!」

早速使いたいのだろう、スザクが湯呑みを手に台所へ向かった。

「ね、可愛いでしょ?」
「カレン」

スザクも、プレゼントも。と笑うカレンに、いくら可愛くても男が使うものではないだろう。もう少しどうにかならなかったのかと目で訴えるが、カレンもニコニコ笑顔を崩さない。藤堂は、まあ諦めなさい。といいたげに若干悟った顔をしていた。もしかしたら過去に止めた経緯があるのかもしれない。

「でも、実用的でしょ?ナナリーも来るならちょうどいいじゃない」

ナナリー。
そうだ、ナナリーが使うなら何も問題はない!
むしろナナリーには可愛いものがよく似合う。

「そうだな。ありがとう、大切に使うよ」
「・・・あんたって、やっぱりシスコンよね?」
「ん?妹が大事なのは当たり前のことだろう?」
「あー、はいはい、そうですね。あんたお兄ちゃんと同じ人種だったわ」

どういう意味だと返せば、そのままの意味よと返された。
スザクがお茶を入れた湯飲みを持ってきたので、この話はここで終わりとなった。

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