オオカミの呼ぶ声2

第 18 話


ルルーシュが戻ってきてから、穏やかに時間が過ぎていった。
この土地の守り神が落ち着いたからか、自然と皆の顔も以前より明るくなっていた。それだけルルーシュという存在はスザクにとって大きく、この土地にとっても大事なのだと再確認したからなのか、ルルーシュの誕生日は村を挙げての大騒ぎとなってしまった。
ルルーシュはもっとこじんまりとした会を望んでいたし、むしろ誕生日を祝う必要はないとまで言っていたけれど、スザクだけではなく私達もルルーシュが帰ってきて嬉しいのだから、まあ仕方がない諦めなさいと私達は騒ぐルルーシュを無視して誕生日の飾り付けをした。
会場はもちろんルルーシュとスザクの家。大人数が押しかけてきたけれど、無駄に広い古民家はこういうときに役に立つ。
宴会部長である玉城が仕切りだしたので、途中からは大人たちの大宴会に変わってしまったが、そんな中でも文句をいいながらもルルーシュは嬉しそうに笑っていた。誕生日を祝ったことより、大人たちに可愛がられている私やスザクを見て喜んでいた気もするけど、楽しめたなら理由などどうでもいい。
私もこんなに楽しそうに笑いながら、大人たちにいじられているスザクを見たのは初めてな気がする。大人たちの態度から、今までスザクとのあいだにあった壁がなくなったように思えた。いいことだ。スザクはこのぐらいの馴れ馴れしさで人と関わるほうがいい。スザクは普段ポジティブなくせに一人にするとネガティブになるから、多くの人と関わって生きて欲しい。
とはいえ、スザクがここまでの接触を許してるのは、ルルーシュが戻ってきたことを皆が喜んでいるのが嬉しいからだろう。
後から知ったが、参加しようとやってきた不純な動機を持つ人達は、兄たちが門前払いにしていたらしい。言われてから兄と藤堂さんの姿がずっとなかったことに気がついた。兄たちはずっと門番をしていて、そこでまたひと騒動あったらしいが、お酒と美味しいつまみを食べながら片手間にあしらったという以外、私たちに内容を知らされることはなかった。
・・・怖かったのは、門番の中に何故か神楽耶が混ざっていたことだ。スザクが嫉妬したら困るからと、神楽耶はまだルルーシュに会うのは控えているらしいが、わざわざやってきて、門でおいしいごはんをつまみながらニコニコと嬉しそうに笑っていたという。ニコニコと笑いながら、スザクの敵には容赦のない彼女がどんな対処をしたのやら。
その後のクリスマスと正月も、例年になく賑やかだった。
玉城の店はクリスマスの装飾に彩られ、スザクも手伝ったせいか何時になく大盛況だった。それで味をしめた玉城は電飾を正月用の装飾に形に変えた。キラキラと光るお店は辺鄙な村ではよく目立ち、スザクが装飾を手伝ったとわざわざパネルに書いたこともあり、正月の三が日は大行列となっていた。雪の中長時間待たせるのはマズイと言ったのだが、これは商機だと桐原が目を輝かせ、玉城の店の周りに出店を出し始めたことで収集がつかなくなっていった。桐原がこうして稼ぐお金は基本的に枢木神社やスザク関係に使われるので、この土地の人間は桐原を拒絶するどころか我先にと手伝いはじめる。まるでお祭り時期のような出店と観光客に、スザクが警戒して外出しなくなったのだけが誤算だったらしい。
正月時期だけはスザクが神社にいると話題になっていたが、今年は元旦の午前中だけでやめていた。ルルーシュの誕生日から続くあまりの騒ぎにルルーシュとカレンも神社に行くのは危険だということになり、ルルーシュとスザクの家に三人はこもって正月遊びをして過ごした。
さて、何で遊ぼうか。そう考えていたら近所のお年寄りが昔ながらのおもちゃを持ってきてくれた。昔ながらの正月遊びをルルーシュは知らないが、スザクは昔遊んだ経験がある。羽つき凧揚げこま回し。どれも庭で十分できる遊びだ。音を聞きつけた近所のお年寄りも集まってきて、昔とった杵柄だと、私達顔負けの技術を見せた。こま回しとけん玉、面子では私もスザクもルルーシュでさえ勝てないほどだ。「この角度でこの速度を保ちつつ・・・」とルルーシュがあーだこーだ言っていたけど、一番下手だったのはルルーシュなので、このての技術勝負は知識があっても経験には勝てないのだとそろそろ理解して欲しい。
福笑いや百人一首、ダルマ落としであんなに盛り上がるなんて、正月ならではだろう。昔の遊びだからとなめていたけど、本当に楽しかった。
沢山食べて沢山遊んで沢山寝て。
冬が過ぎ、春が来て。
ルルーシュの体調は、時間とともに回復していった。
とはいえ、一度壊れた身体がちゃんと治るのにはまだまだ時間がかかるらしく、無理をしたらすぐにぶり返した。言い換えれば無理さえしなければ大丈夫になったので、問題なく高校に通うことになった。
・・・今思えば、この時が一番幸せなときだった。

Page Top