オオカミの呼ぶ声2

第 20 話


ああ、なるほど。そういうことかと納得した。
納得はしたが、やはり10歳の少年の後ろに16歳が乗るのは間抜けじゃないか?と思う。いや、どう考えても間抜けだろう。だが、この二人の全速力・・・しかもろくに舗装されていない道でそれについていける自信など有るはずがない。いまのように、スザクの小さな背中にしがみつくのがせいぜいだ。
ああ、だがそのおかげで周りがよく見えた。
用事があるときは藤堂たちに車を出してもらえ、歩いても神社まででそこから先は徒歩では来るな。カレンとスザクが学校に行っている間も学校に来ようなんて考えるな。と、意味不明なルールを押し付けられていたが、その理由がすべて理解できた。
体調が良くなかったこともあり、疑問に思いながらも従ったのは正解だった。こんな連中には、関わりたくはない。
狂信者、と言っていいだろう。
スザクや神楽耶の逆鱗に触れながらも、神であるスザクを心酔し・・・いや、自分に都合の良い神だと盲信し、この土地にやってきた住民が、スザクに気づき、そこかしこから道に姿を現したのだ。
その数は一人二人ではない。
それを見た瞬間、カレンとスザクはスピードを上げた。
自転車を止め、少しでも会話を。そう考えているのだろう。駆け足でこちらに近づいてくる。そうやって道を塞ごうとする彼らを器用に二人は避けた。
相手も流石に自転車相手なら怪我をするかもしれないと、ギリギリまで迫る自転車に驚き慌てて避けた。通り過ぎる時、彼らがなにやら自分に都合のいいことをまくし立てているのが耳に入った。神なんだから人の願いぐらい聞けと怒鳴っている姿に呆れてしまう。聞けば、ここに住んでいるわけではなく、今日から学校が始まることを知り、車でやってきて張り付いていたらしい。警察にも相談し、あの手この手を尽くしてきたが、何をやっても結局こうやって戻ってくるのだとか。
毎日毎日この状態にめんどくさくなった二人は、全速力で彼らを撒くという方法を普段から取っているのだという。この二人の足にかうものなどそうはいない。いたらこんなところで無駄な努力をしていないで、今からでもオリンピックを目指せと進言するだろう。いや、そもそもそんな才能のあるものはこんなことはしないか。
彼らは普段カレンとスザクの行動時間に合わせて来ていたが、ルルーシュが戻ったことでその行動パターンに変化が出てしまい、そのせいか出没回数が増えていたらしい。困った時の神頼みという言葉はたしかにあるが、彼らの行為はスザクをただ怒らせるだけだ。触らぬ神に祟りなしという言葉を知らないのだろうか。
今まで狙われていたのはスザクと、一番近くにいるカレン。
神社のあたりに玉城が店を出したのはこういう連中の牽制もあるらしい。玉城は見た目と言動がアレだから、関わったら運気が落ちると言われているんだとか。
藤堂達や他の大人たち、子どもたちは最初それなりに絡まれたらしいが、やはり狙うべきはカレンとスザクだと結論づけたという。
とはいえ、問題は彼らだけではない。
通学中の学生の目を見ればわかる。
俺の知らない連中は皆、俺を睨みつけていた。
ああ懐かしいなと思う。
小学生として通っていた頃、最初のうちはこんな目に囲まれていた。人気者のスザクとカレンを独占する邪魔者として。

「ホントは、外の人間を入れるのをやめようかって話もあったんだけどね」

むしろ参拝や買い物客以外立ち入り禁止にすべきだという話も出たが、それをやれば余計にひどくなりかねないから却下された。自分勝手な願い事や嫌がらせをすればスザクが怒ると言っても聞く耳を持たない。最近はカレン相手にも差別だと、贔屓だと騒ぎ、あからさまな嫉妬をぶつけてくる者もいるらしい。だからスザクは学校に行きたくないとごねたのだ。

「あしらい方があるから、ルルーシュもすぐ慣れるわよ。基本かまわないのが一番。気にしたら負けよ」

気にすればするほど、相手は調子に乗るから。
そんな話をしているうちに、学校についた。

Page Top