オオカミの呼ぶ声2

第 21 話


予想通りというかなんというか。
わかり易すぎて反対にありがたいというべきか。
ずっと傍にいる私に対して敵意をむき出しにしていた面々は、新参者のルルーシュが、当たり前の顔でスザクの隣にいることをよく思はずがない。
小学生の頃は全然気付かなかったけれど、あの頃もルルーシュはこの視線を向けられていたのだろう。誰が見てもわかるほどあからさまな態度は、それだけ彼らが幼稚だと示してもいる。たちが悪いということだ。
スザクは今まで私がやられた事を知っている。
あの頃の事も、もちろん覚えている。
だから駐輪場でこちらを伺っている生徒を牽制し、教室に入るまでの間、周りを警戒し不愉快そうに口を一文字に結んで歩いていた。
そのおかげか、誰も声をかけては来ない。
スザクの後ろにルルーシュ、そして私と並んで歩く。
中学から高校へエスカレーター式の学校と言っても、全員が全員高校に進学できるわけではないし、田舎から都会へ移り住んだものもいる。
だから高校には、小中には見なかった顔が多く混ざっていた。
こんな田舎の高校に進学してくる理由など一つしかない。スザクだ。神と呼ばれる存在が実体を持ち、しかも人とともに暮らしている。そんな実例はここにしかない。人と交流せずにいる神は日本のあちこちにいるが、一般人に知られていない。現に京都の神楽耶は普通の人が立ち入らない場所で厳重に守られ暮らしている。
数百年を生きる土地神スザクをただ見るだけなら年末年始の参拝に来るか、ショッピングモールやこの土地に来るだけで目にすることもできるだろう。彼らはそれだけでは足りずに、学校に我が子を送り込むのだ。
嫌な空気。今後面倒なことが起きそうだ。
小中の頃より多分、面倒臭いだろう。
初日から若干憂鬱になりながら、教室に入ると見知った面々が待っていた。

「おはよう、カレン、スザク、ルルーシュ」
「おはよ~」

スザクと旧知の仲だからと特別扱いされているクラスの面々も、少なからず嫌がらせを受ける。今日は初日だから特にひどかったのだろう。皆若干疲れた顔をしていた。まあ、これは全員が覚悟していたことだし、また時間が経てば静かになることを知っているからそう問題はない。

「おはよう」
「おっはよ~」

私とスザクは皆と同じく若干不快な声で挨拶をした。

「ほら、ルルーシュも」

みんなの疲れ切った姿に眉を寄せていたルルーシュの背中を軽く叩く。

「あ、ああ。みんな、おはよう」

気持ちを一瞬で切り替え、にっこりとそれは爽やかな笑顔で言った。
普段私たちには見せないような笑顔。
その瞬間、女子生徒の小さな悲鳴と、男子生徒の驚きの声が聞こえた。ああ、そうだ、こいつめっちゃくちゃ美人になって戻ってきたんだった。そんなルルーシュのまばゆいばかりの笑顔。やばい、これは落ちる。戻ってから頻繁に一緒に居て見慣れた私とスザクには効かないけれど、ルルーシュが戻ってから2.3回しか顔を合わせてない人には効果てきめんだ。
会心の笑顔を見そこねたスザクは、周りの空気が変わったことに首を傾げているし、ルルーシュ本人もどうかしたのか?と首を傾げてる。
こいつ、天然たらしだ。
待って、小さいルルーシュもめっちゃくちゃ可愛かったし、それに見慣れてたみんなでこれなの?え?やばくない?免疫ない生徒どれだけいると思ってるのよ!?え?ちょっと待って・・・まさか、みんなスザク絡みでさっきルルーシュを睨んでたんじゃないの?え?え?まさか、美人なルルーシュに・・・見惚れてた・・・?
私はとんでもないことに気づき、冷や汗をかいた。

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