異世界冒険譚 第3話


「私としては、ゼロが料理をしていることを突っ込むのが先だと思うが?」

クツクツと笑いながら言われ、はっとなった。
そうだ、ゼロが料理。
作れるのだろうか? むしろゼロに作らせていいのだろうか。
ここは部下である私が作ると言うべきだったのでは?

「まあ、あいつは料理好きだからな。一人で好きなように作らせてやれ」

ストレス発散にもなるだろうし、気晴らしにもなるとC.C.は言うのだが。・・・ゼロの趣味が料理・・・ゼロが、料理好き・・・。そのパワーワードに頭がくらくらしてくる。男のゼロに女子力で負けた気がした。明日の朝は、私が作ろう。そうしよう。ちょっとぐらいなら、私にだって作れる・・・はず。

「ゼロは料理が好きなんだ。まるでルルーシュみたいだな」

柔らかく微笑みながら、スザクが言った。男が趣味で料理をするというのが珍しいのだろうか、ディアナは驚きながらスザクの顔をまじまじと見ていた。 確かに、ルルーシュは料理をする。リヴァルの話では家計簿も付けているまさに主婦だ。

「ルルーシュとゼロを一緒にしないでよね」

あんな世の中を斜めに見て批評家きどりしている男とゼロを一緒にして欲しくない。そう言うと、ディアナは驚いた顔のままこちらを見てくる。

「あ、えーと、ルルーシュって言うのはね、私とスザクの共通の知り合いで・・・スザクの親友なのよ」
「親友・・・ですか」

あ、そうなんですね。といいたげに、ディアナは言った。そういえば、先日の戦闘でもスザクはルルーシュの名前を出したから、気になっていたのかもしれない。

「なんだ、騒がしいな」

厨房の扉が開き、ゼロが顔を出した。 もう仮面もマントも手袋もいつも通り身に着けているいつものゼロ。ただし、ドアが開いたことで、おいしそうな匂いがさらに強くなった。誰のものか解らないが、お腹が鳴る音が聞こえた気がする。
私のではない・・・はずだ。

「できたのか?」
「ああ。運ぶのを手伝ってくれ」
「運べばいいんだね」
「了解です、ゼロ!」

スザクに負けてなるものかと我先に厨房にとびこんだ。

「・・・何か?」

よほど空腹だったのか、スザクとカレンが争う様に厨房得飛び込んだのを見ていると、視線を感じた。振り向くと、そこには複雑そうな顔をしたディアナ王女。

「い、いいえ。おいしそうな匂いですね」

どこかぎこちない感じだった。 先ほどからスザクとカレンがやけに騒がしかったから、もしかしたらその関係かもしれない。

「おい」

不機嫌そうな声に顔を向けると、そこにいたのはC.C.。 視線は皿を持って戻って来たスザクとカレンの手の上に注がれている。テーブルの上に置かれたそれらは自信作だが、この女は不愉快そうだった。

「ピザはどうした」
「作っているはずがないだろう」
「何故作らない。お前なら余裕で作れるだろう」

確かに作れるが、何故作らなければいけないのだ。

「なら、これは食べないのか?」
「食べるが、それとこれとは別だ」
「そんなに食べたいなら材料を全て用意し、ピザを焼くための窯も作る事だな」

それでなくてもこちらの世界の食材は見知らぬものばかりなのだ。おおそらくこれはそうだろう、というカンでどうにか作れたとしても、ピザを作るのに必要な材料を意図的に集めるとなると骨が折れる。特に新鮮なトマトとチーズが問題だ。 そんな説明をした所でこの女が納得するとは思えないが。

「ほう、すべて用意できれば作ると言う事か」

CCはにやりと笑った。

「できればな」

言質を取ったぞと言わんばかりの態度のCCに、それはとても困難な事だとは言わないでおく。相手は魔女だ。不可解な手を使ってもおかしくはないのだから。 テーブルのセッティングも終わり、全員が席に着いた。

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