本当と嘘と 第3話

「説明は以上だ。何か解らない事はあるか?と言っても、私も今朝渡されたばかりで、内容はよく解っていないのだが」

小型の液晶端末をヴィレッタより渡された生徒会役員は、表示された内容に、一喜一憂していた。それは、一瞬携帯電話かと思ったのだが、携帯電話としての機能は無い端末で、そこに表示されているのは、自分に対して他人がどういう感情を持っているかを視覚化したものだという。

「先生、お聞きしても?」

ルルーシュはすっと手を上げて、発言の許可を求めた。

「なんだ?」
「ここに登録されている名前は、これ以上増えないと考えても?」
「いや、それがな、基本的には誰かと一定以上の対話をした時点で、名前が表示されるようになるそうだ。理屈は解らんから、そこは聞かないでくれ。あと、ある一定以上の感情を持っている相手の場合、つまりは、(*´v`*)と(`△´#)は対話なしでも一定距離内に居るだけで表示されるらしい。表示限界は300人までだ」
「成程、自分に対して悪い感情を持つ者を探るために開発された護身用のような物という事ですか?」
「いや、悪意だけではなく、好感をもたれているかも判別できるから、その為のモノではないと思うのだが?」

ルルーシュの問いに、なぜ護身用と断定したのか不思議そうにヴィレッタは眉根を寄せた。

「好感?」

そのヴィレッタの答えに、ルルーシュも眉根を寄せる。
リヴァルはルルーシュの手元の端末を、隣の席からひょいっと覗き見ると、目を丸くし、立ち上がり後ろからまじまじと覗きこんだ。

「リヴァル、人の物を覗くのは失礼じゃないのか?しかもなんだその顔は」

リヴァルの反応に、不愉快だと言わんばかりにルルーシュは眉根を寄せた。

「え!?ああ、ワリい。でも、先生ルルーシュの機械、壊れてるんじゃないですか?これはありえないでしょう!?」

ルルーシュの端末に横から手を出し、名前をスライドさせていくと、うん、やっぱり壊れてると思う、とリヴァルは頷きながら言った。
何々?と、他のメンバーも覗きこみ、目を丸くする。

「うっわー、凄いわねルルちゃん。ヴィレッタ先生以外好感度MAXじゃない」
「何?」

ヴィレッタもその内容に眉を寄せ、ルルーシュの後ろへ回り込み、端末を覗きこんだ。

リヴァル (*´v`*)
ミレイ  (*´v`*)
シャーリー (*´v`*)
ロロ (*´v`*)
ヴィレッタ (>v・)

以下学園の先生及び生徒の名前がずらり並び、その横すべてに(*´v`*)が表示されていた。すでに40人以上登録されている。

「これ、は・・・」 

その内容に、ヴィレッタも驚きを隠せなかった。
ずらりと並ぶ(*´v`*)もだが、自分の評価が(>v・)と言う事も信じられない。

「あ、でも会長とリヴァルは私も(*´v`*)だったよ。ルルは(^▽^)」
「俺も、会長とシャーリーは(*´v`*)だ。ルルーシュは(^▽^)って、お前もここは(*´v`*)だろ」
「リヴァル、ルルーシュが(^▽^)つけるだけでも相当だと思うわよ?で、私もシャーリーとリヴァルは(*´v`*)、ルルちゃんは同じく(^▽^)。だから、ルルちゃんの端末も、生徒会メンバーとロロは(*´v`*)で問題ないんじゃない?ヴィレッタ先生もね」
「なるほど、最初(*´v`*)から始まって、好感度が下がるとイラストが変わるシステムだと思っていたが、違ったのか。と言う事は、機械が壊れていると見て間違いはないだろう。大体、俺はまだここから動いていないのだから、すでに50人以上が表示されること自体おかしいからな」

そうよねーと、皆が頷き、「ってかもう50人超えたのかよ!?」と、リヴァルは驚き、再びルルーシュの端末に視線を落とした。

「先生、そう言えば一定距離ってどのくらいなのかしら?」
「200mほどのはずだ」
「200mなら校舎の一部は入るわよね。となると一概に故障とはいえないのかも。ルルちゃんてば人気者だし」
「流石にありえないでしょう、故障しているんだよ。ヴィレッタ先生もそう思うでしょう?」

ルルーシュがにこやかにそう聞いてくるので「そうだな」と、ヴィレッタは答えた。
なにせ、脅されて味方に引き込まれているのだ。良い感情をヴィレッタが持つはずがない。百歩譲っても(・_・)でなければならないはずだ。ルルーシュの持っていた端末を手に取り、ヴィレッタはその表示を何度も確認し、きっとそうだろうと頷いた。

「ルルーシュの端末は、本来(・_・)と表示される者も(*´v`*)と表示されている可能性はある。よく考えてみろ、いつも授業をさぼる問題児に対して(>v・)はないだろう。せめて(・_・)か( 一_一)だ」

その内容に、成程と同意を示す声が上がる。

「壊れている事は報告しておくが、とりあえず持っていろ。そう指示されているからな」
「解りました」

差し出された端末をルルーシュが再び手に持った時、生徒会室の扉が開き、スザクが入って来た。

「スザク、今日は仕事じゃなかったのか?」
「少し前に終わったんだ。時間も早かったから、せめて生徒会には顔を出そうかと思って」

昨日の緊急招集後から今までラウンズとしての仕事があり、ようやく終わらせたスザクは、今登校してきた。
仕事と言っても例の端末がらみで、時間だけが無駄に掛る内容の薄い物だったが。

「あれ?皆何見てるの?」

全員が同じような端末を手にしているのを見て、スザクは首を傾げながら訊ねた。その様子に、ルルーシュは困ったような顔をしながら、自分の端末を覗きこんだ。

「ヴィレッタ先生が持ってきたんだ。皇帝直属の研究機関で開発された人の心を映し出す機械のデータを取るため俺たちにも協力してほしいと今説明を受けていた所だ。どうやらラウンズ3人がここに通っている事が理由らしい」

まさか生徒会の人まで巻き込まれると思っていなかったスザクの僅かに困惑した表情に「イラストで見えるだけだから、詳しい内容なんて解らないわよ」と、ミレイは明るい声で言った

「実は僕達の携帯にも同じ機能が加えられたんです。なので、どのような物かは理解しています」
「そうなのか、この学園で渡されるのはヴィレッタ先生を含めたここに居る者と、ロロの6人らしい」

そうなんだ、とスザクは自分とは違う作りの、ヴィレッタ分の端末を受け取ると、内容に違いがないか確認をした。

リヴァル (^▽^)
ミレイ  (^▽^)
シャーリー (^▽^)
ルルーシュ (・_・)
ロロ (・_・)

表示のオンオフと、スライド用のボタンはあるが、それ以外操作はできないらしく、表示される内容は携帯と変わりは無いようだった。

「あ~、やっぱりルルーシュの壊れてるな。うん、これで確定!」

リヴァルのその言葉に、ルルーシュの傍に居たミレイとシャーリーも再びルルーシュの端末を覗きみ、眉を寄せた。

「あら、ホントだわ」
「うんうん、これは無いよね」

三人の反応に首を傾げながら、スザクはヴィレッタに端末を返し、ルルーシュの方を指差して訊ねた。

「ルルーシュの、壊れてるんですか?」
「ああ、ルルーシュの表示が、私以外全員(*´v`*)なんだ。しかも、ここに居ない教員、生徒も含めてな」
「全員ですか?」

それは流石に無いだろうと、僕は眉根を寄せた。
確かに彼は学園で人気がある。だが、表示される全員が(*´v`*)だとしたら、もしかしてギアスで?いや、彼はそんな無駄なギアスは使わないだろう。何せ彼のギアスは1人1回のみと言う制限があるのだから。

「まだテスト段階の機械という事ですし、不具合はあるのかもしれないですね。その話は僕の方から報告しておきます」

そう言うと、スザクはルルーシュの方へ足を向けた。スザクが近付いてきたことが解ると、ルルーシュはスッとその端末を胸ポケットに仕舞った。そのあからさまに拒絶するような態度に、スザクは思わず眉を寄せた。

「ルルーシュ?君の端末見せてもらえるかな、壊れてるなら交換してもらってくるよ」
「故障している場合でも、所持するように指示されているんですよね先生?」

スザクが頂戴、と手を差し出すが、ルルーシュはスザクに渡そうとはせず、ヴィレッタに向かってそう聞いた。

「こちらに渡された文章にはそう書いているな。故障していてもデータは取り続けるから、新たな端末が届くまでは所持するようにと」
「なら、お前に渡して交換してもらうわけにはいかないな」

にこやかにスザクに向かってルルーシュは笑いかけるが、端末を取り出すそぶりは無く、スザクは不満ではあるが手を下した。他の人には見せるが、僕には見せたくないのか。友人のふりをするなら見せるべきだろうと、思ったとき、リヴァルがこっそり耳打ちしてきた。

「見ない方がいいって。お前たちあんなに仲がいいのに、あの表示は見たら気分悪くなるからさ。ルルーシュもそれがわかってるから見せたく無いんだよ」

あの表示?何の話だろう?
まあ、内容に関しては後でロロかヴィレッタから確認すればいいと、スザクはリヴァルに解ったと同意の言葉を返した。 そんな二人の様子を盗み見ながら、ルルーシュは、現れたスザクの表示を見て、他はともかくこの内容は正しいのだろうと、目を伏せた。

スザク (`へ´)
リヴァル (*´v`*)
ミレイ  (*´v`*)
シャーリー (*´v`*)
ロロ (*´v`*)
ヴィレッタ (>v・)

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