本当と嘘と 第7話

ルルーシュ (*´v`*)

元に戻ったその表示に、思わず頬が緩んでしまった。
やはり爆弾はあれが原因で、あの会話でルルーシュの懸念事項は消えたわけだ。
よし、大丈夫。と、携帯をポケットに戻すと、僕は政庁の総督執務室に居るナナリーの元へ向かった。ジノとアーニャは、今流れている噂がどの程度の内容になっているか調べるため、別行動中だ。
事情を説明し、セシルにも動いてもらっている。
僕がするべき事はまず、ナナリーに今流れている噂の話をする事だと、執務室のドアをノックした。




その頃、ルルーシュは自室で困惑していた。

スザク ( 一_一)

「なんで、スザクのランクが上がったんだ?何があった?・・・いや、この機械は故障しているのだし、そもそも、こんな物に頼るなど馬鹿馬鹿しい・・・のだが」

壊れているとはいえ、念の為、日に一度はチェックをしていたが、まさかスザクの評価が変わっているとは思わなかった。いつもとは違うその表示を、思わず凝視してしまう。こんな機械が測定した表示の変化に一喜一憂している皆の姿を見て、馬鹿馬鹿しいとさえ思っていたのに、スザクの評価が上がった事が、どうして気になるのだろう。
そもそも、スザクは敵だ。評価など互いに良いはずがない。俺からスザクへの評価は解らないが、例えどんなに悪く表示されていても、深層心理を反映していると仮定すれば、何も問題は無い。
あいつは俺を皇帝へ売り払い、ラウンズの地位を手に入れたのをこの目で見、この耳で聞いたのだから、本来の、ゼロの記憶を持つ俺ならば、(`△´#)よくても(`へ´)だ。
心の奥底にその思いが残っていて、反映されている可能性をスザクは否定はできないだろう。幸い、スザクは自分の画面を人に見せようとはしない。ジノが見たのは、この機能を渡された初日だけだと言う。ならば俺からの評価がどうなっているか、スザク以外は誰も知らないはず。

「・・・考えても仕方がないか。スザクの表示も壊れ始めたと言う事は、全員の表示が役に立たなくなったという事だ」

それだけ分かればいいと、俺は端末の画面の電源を落とし、内ポケットに仕舞った。




「私とスザクさんが、お付き合いをですか?」
「うん、あの機能の表示を見たジノが、人に話しちゃったらしくてね。そう言う噂が今流れているらしい。本国に確認した所、ジノだけではなく、噂を聞いた複数人が僕とナナリーの記録を確認したそうだよ」

最初は僕の話を頬を赤らめて聞いていたナナリーだったが、本国に自分達の記録を確認している者が何人もいると聞いて、表情を曇らせ眉をよせた。

「集められたデータは非公開になるのではないのですか?」
「違うみたいだね。僕もあっさりジノのデータ教えてもらえたから、誰でも聞けるみたい。元々人の心を暴きだし、その反応を見る実験のような物だから、集められたデータに興味を持ち、そこから人の心を暴くと言う行為も研究の一環なんだって。嘘のない世界の体験のような物だから、誰のデータでも教えますって言われたよ」
「プライバシーは無いのですね」
「うん。そもそもこの端末自体がプライバシーを無視した物だからね。一方的に相手の心を覗き見ている。陛下の言う嘘のない世界が何かは僕にはわからないけど、つまり、こういう心の中の感情も全部、内容を知りたいと思っている不特定多数の人にこちらの意思とは関係なく全て暴露される世界だって事は、よく解った。今は相手の感情が、相手を好きか嫌いか7つの項目で表示されるだけで済んでいるけど、これがもっと細かく表示されたり、色々な心情も表示されるようになったり、心で思っている事が文章で表示されることになったらと思うと、恐ろしいよ。・・・軍事利用されれば、敵国は成す術が無くなる。作戦もすべて筒抜けだからね」

今はただ(*´v`*)で表示されていても、これがどんな感情に基づくかは解らない。人の感情は様々だ。愛一つとっても、友愛、親愛、家族愛、慈愛、自己愛、恋愛、性愛と、数多く存在する。それらが全て事細かに表示され、相手に伝わるようになるなんて考えたくもなかった。

「そうですね。私も人の心を暴き出すこの機能は、間違っていると思います」

ナナリーは大きく頷き、僕に同意を示してくれた。

「嘘のない世界、それはとても恐ろしい世界ですね」
「そうだね、自分自身が隠している醜い心すらも晒される世界だからね。そんな世界、僕は生きていけないだろうな」
「生きていけないのですか?」

僕の言葉に驚いたように、ナナリーはこちらに顔を向けた。

「うん、僕には無理だ」

そんなナナリーに笑いかけながら、僕は大きく頷いた。
ルルーシュを皇帝に売り地位を手に入れた。今は記憶を奪われたルルーシュを餌と呼び学園で監視し、ナナリーにもルルーシュは見つからないと嘘を吐き続けている。こんな僕の姿を知ったら、間違いなくナナリーは僕を軽蔑するだろう。
ナナリーだけじゃない、学園のみんなも、ジノ、アーニャ、ロイド、セシルもだ。
どれ程蔑まれても、売国奴と呼ばれ、裏切り者と呼ばれても関係ない、ナイトオブワンとなって日本を取り戻すと決めていた。それが僕の進むべき道だと、例え親友を売り払い、裏切っても歩む道なのだと、自分に言い聞かせて。だが、本当に親しい人たちに全員に軽蔑されても、僕はその道を突き進む事は出来るのだろうか?答えは否。おそらく僕は耐え切れなくなり、自滅するだろう。ルルーシュにかけられたギアスの呪いで自殺は出来なくても。

「嘘がない世界と言うだけなら、こんな心を暴く機能ではなく、嘘発見機の小型版で充分だと思う。そうすれば、話したくない内容は口を噤むなり、話を逸らせばいいからね。選択肢は残せる」
「私は、人の手に触れながら話をすると、その方が嘘を吐いているか何となくですが解ります。つまり、それを全員が身につけるという事ですね」
「うん。・・・ナナリー、以前学園で誘拐された事を覚えているかな?僕とルルーシュが助けにいった時の事」
「はい、覚えています」

ナナリーは記憶を操作されていないのだから、自分の真上に爆弾がぶら下がっているようなあの状況を忘れているはずがない。予想通り、彼女は即答してきた。

「あの時の犯人、人の心を読む超能力を持っていたんだって言ったら信じるかい?」
「え?超能力、ですか?」

突然の話に、ナナリーはキョトンとした表情で首を傾げた。

「後から知った話だけど、常に周りにいる人の心が頭に響いてくる状態だったそうだよ。段々その力が強くなってきて、とうとう精神的に耐えられなくなり、彼の心は壊れてしまったんだ。ただ、そんな力を持つ彼にも、たった一人だけ心を読めない人物がいた。それがC.C.なんだ」
「C.C.さんが?」
「うん、前にナナリーは話してくれたよね、C.C.がたまに遊びに来ていたって。そのC.C.だけは彼の超能力が効かなかった。・・・人は綺麗な事だけを考えるわけではない、醜い心も全て見続ける事は耐えられるものではないんだ。特異な力があった彼にとって、嘘のない世界が日常だった。そんな世界から逃げ出したくて、心が読めないC.C.を求めたんだ。だから、ルルーシュがいるとC.C.を手に入れられないと考えて、ナナリーを誘拐した」
「そうだったんですか・・・でも、今のお話で納得できました。あの方、私が何も話していなくても、煩いと何度も言っていました。まるで私の考えが解るように話すので、気味が悪かったのですが、心を読んで・・・いえ、心が聞こえてしまったのなら、理解できます。嘘のない世界で生きると言う事は、・・・あのような状態になるのですね」

ナナリーは悲しげに眉を寄せると、当時の恐怖を思い出したのだろう、両手をギュッと握り、俯きながらそう言った。
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