本当と嘘と

「システムの点検を？」

『はい、明後日の放課後にブリタニア本国から、技術者が来る事に。兄さんのシステムが遠隔操作では直らないらしくて、直接機械を見に来るそうです』

ロロからの電話は、ルルーシュの端末が修理される事になったと、ヴィレッタを通しルルーシュに連絡が入った事を知らせるもので、これは不味いとスザクは冷や汗を流した。
もし、全員の（*´ｖ`*）表示が直ったとしても、僕の表示は変わらない。
ルルーシュ達がおかしいと言っても、技術者が正常だから、表示は合っていると言ってしまえば、僕がルルーシュを嫌っている事が知られてしまう。
そうなると・・・餌であるルルーシュの監視が出来なくなってしまい、任務に支障をきたすことになる。 ---僕の本心を悟られ、ルルーシュの友情を失う事など何とも思ってはいない。僕達は敵同士で、互いを憎んでいる偽りの友人なのだから。今ある友情など所詮偽り。あくまでも監視をする上で問題が出るから、修理されると困るのだ。
ルルーシュの端末の修理をどうにか回避できないかと、僕は皇帝へ連絡を取るため、通信室へ急いだ。
元々、定時連絡の時間だったため、皇帝との連絡はすぐに取り次がれた。

『ほう、ルルーシュの端末がその様になっているとはな。ならば、表示は壊れたままで、データだけは正常な物を入手できるよう手配をしよう』

「有難うございます」

スザクはこれでひとまずは大丈夫だろうと、ホッと息を吐いた。
報告は以上だと判断した皇帝は、それまでの無表情から一転、憤怒と言っても過言ではない表情でスザクを見下ろした。大国の皇帝という地位は伊達ではない。画面越しにも伝わってくる畏怖の念を覚えるほどの威圧感に、全身に悪寒が走り、スザクは思わず硬直した。

『して、枢木よ。ナナリーの事なのだが、結婚を前提に交際をしていると言うのは、本当か？』

殺気を込めた重厚な声音で、皇帝はそう、スザクへと質問をした。
おそらく何かしらの話が皇帝に伝わっているだろうとは思ってはいたが、結婚を前提に付き合っている事になったのか。そう言えば、ルルーシュとナナリーの兄姉は結婚適齢期に入った方が多いと言うのに、誰一人結婚をしていない。もしかしたら、この皇帝は自分の子供達に付いた悪い虫を全て排除している可能性もあるのではないだろうか。皇帝からの、ナナリーへの（*´ｖ`*）が、真実だと言う事をスザクは痛感し、娘を持つ男親の敵対心を一身に受ける形となった現状に身震いを覚えた。
端末の表示は（`△´#）が最低ランクだが、もしかしたらそれをはるかに下回っているのかもしれない。

「畏れながら、陛下のお耳に入った内容は真実ではありません」

声が震えそうになるのをどうにか押えながら、スザクはどうにかその言葉を口にした。

『ほう。嘘だと、そう申すか』

「はい。自分とナナリー皇女殿下のデータを、本国に問い合わせた者たちが作り出した唯の噂話に過ぎません」

ジノとアーニャ、そしてセシルとはこの後夕食を一緒にする際に話を聞くことになってはいるが、おそらく似た内容になっているだろう。ジノ、覚えておけよ、と、スザクは噂の元である同僚に殺意に似た怒りを向けた。

『データを問い合わせた、だと？』

そのスザクの言葉に、皇帝はそれまでの怒気を消して、何の事だと言いたげに、眉間に皺を僅かに寄せた。

「はい、今回の実験で本国へと転送されているデータですが、自分以外の誰かの内容を知りたい場合は、電話で問い合わせをするだけで、全て知ることが出来ます」

『なんだと！？誰でも知ることが出来るというのか！？』

この反応で、皇帝が知らなかった事は明白だった。もうスザクと話す事無いと言いたげに、皇帝は即座に通信を切ったらしく、スザクの目の前のモニターは、あっという間に真っ黒い画面となった。
これはどう取るべきだろうか？

・他の者にデータを閲覧させる事は想定外。
・自分のデータは見られたくない。
・他人のデータを見たい。

考えても仕方がないかと、スザクは立ち上がり、通信室を後にした。

端末の修理に、技術者がやってくる。
この事に、ルルーシュはどう対応するべきか考えていた。修理されれば、今表示されている300人の大半が消えることになる。そうなれば、記録スペースが空いた事で影武者であるサヨコの名前がこの端末に記録されてしまうだろう。
技術者が修理した後に、似た端末を作るか、データをこちらで弄れる様にし、ブリタニアの目を欺かなければならない。
・・・が、それはどうにかなるだろう。問題はもう一つの表示だ。

スザク。

今はなぜか（一_一）で表示されているが、おそらく次に更新された時は（`へ´）か（`△´#）が表示されるはずだ。
（＞ｖ・）以下で表示されている時点で、問題だというのに、実際は（`へ´）か（`△´#）だと万が一にも知られてしまえば、その時点で皆にスザクの性格を疑われて・・・。
いや、違う。間違っているぞ。スザクの評価が他の者から見て悪くなっても、今の俺には関係は無い。なぜなら俺とスザクは敵だからだ。記憶の無い俺は（`へ´）か（`△´#）が正しいスザクの気持ちだと知れば、その時点でスザクとの友情は終わるだろう。
そうなればスザクはこの学園に来る意味は無くなり、学生生活を送れなくなるのだから今まで以上に戦場に・・・。
いや、それは駄目だ。
スザクには出来るだけ普通の学生生活を送らせなければならない。
ランスロットが戦場に出ると言う事は、黒の騎士団にとってマイナスでしかないからであって、別にスザクに普通の学生として青春を謳歌して欲しいとか、危険な戦場に出したくないというわけではない。
あくまでも騎士団の為だ。
ルルーシュはそう結論付けると、この端末の故障は直されては困るのだから、現状維持とするための策は何かないかと思案し始めた

HTML表