本当と嘘と 第9話

「こちらの機能は特殊な物で、皆さまもご存じの通り、人の心の動きを感知し、表示しています。その為、特定の体質の方が持った場合、このようにエラーが起きてしまう事が、調査の結果明らかとなりました。・・・つまり、ルルーシュさんのオーラと、この機能の相性が悪いため、端末を修理をしても意味は無いと言う事です」

オーラって何!?
スザクは技術員のあまりにも酷い誤魔化し方に、内心冷や汗を流した。
既にヴィレッタを通し、ルルーシュに端末の修理の話が伝わってしまっていたため、技術員の派遣は決定はしていた。大丈夫です、上手く誤魔化しますと、事前に接触した彼らは言っていたが、こんなひどい説明をするのなら、修理の話自体を無かった事にするべきだったのではないだろうか。こんな内容で納得する人なんていないよと、スザクはちらりと生徒会室を見回した。
生徒会室に居るのは、この学園でこの機能を持っている全員。つまり、ジノ、アーニャ、ヴィレッタ、ミレイ、シャーリー、リヴァル、ニーナ、ロロ、ルルーシュ、そして僕の10人と、ブリタニアの技術員2名の合計12人。
そんな中で、何故か女性陣は瞳をキラキラと輝かせながら、この話を食い入るように聞いていた。

「オーラを測定してたのね!すごいわ!ってことは、もしかして私達のルルーシュの表示もおかしい可能性があるのかしら?」

・・・そう言えば、セシルさんが言っていた。女性はオーラとか守護霊とかそういう不確かな物を好む傾向があると。だから、数年おきにその手の番組が放送され、バカ高い視聴率を稼ぐのだとか。うん、僕にはわからない世界だ。
ブリタニアの技術者は、予想通りの反応です、これなら問題ありませんと言いたげにスザクへ視線を向けた。
確かに、ギアスという超常の力があるのだからオーラがあっても不思議ではないけど、皇帝の直属機関が・・・いや、もう考えるのはやめよう。ルルーシュの機械を修理したくないのは僕だ。その僕が不審がってどうするんだ。スザクはそう自身に言い聞かせると、真剣に説明をく聞くふりをすることにした。

「ルルーシュさんの感情オーラを感知した貴女自身のオーラが、この端末に影響を与えるので、その可能性は限りなく低いと思われます。まだ研究中のモノですので、完全に否定はできませんが」

そういう質問が来ると予想していなかったのか、技術員は明らかに無理のある説明を口にしていた。自分たちには見ることに出来ないオーラなのだから、理解できなくても仕方がない、でもブリタニアの技術員がそう断言するならそうなのだろうと、女性陣は納得したようだった。良いんだろうかこんなので。って良くない!ルルーシュが絶対にこういう物に突っ込みを入れてくる。その時点で終わりだ。
僕はルルーシュが突っ込みを入れた時にどう誤魔化せばいいだろうと、研究員から端末を返されたルルーシュの方を見た。ルルーシュもやはりこの内容には無理があるだろうと言いたげに、眉根を寄せて皆の反応を伺っているようだった。僕の視線に気が付いたルルーシュは、一瞬視線を合わせたが、すぐに顔を背けた。
そのあからさまな反応に、スザクはショックを受けていたが、ルルーシュはそれどころではなかった。

オーラ?オーラと言ったかこの研究員。ギアス嚮団が絡んでいるのだからギアスで測定しているはずなのに、オーラ?これは一体どう考えるべきだ?端末を目の前で開いてはいたが、碌にチェックはしていない、あくまでも中を確認したと言うパフォーマンスだ。となると、ブリタニア側はこの端末を修理したくは無いと言う事か。なぜだ?正常になれば、俺の傍に居る騎士団関係者の名前を表示させることも可能となるのに。・・・いや待て、もしかしたらスザクの表示が悪い事を、ブリタニア側も誤魔化したいだけかもしれない。いずれにせよ、これは好機だ。

「成程、オーラですか。ブリタニアの技術はそこまで進んでいたのですね。では、この端末を俺が持っていても意味はないと言う事でしょうか」

技術員の話に納得したと言う体でそう質問するルルーシュに、スザクは、え?信じるの?と言いたげに驚きの目を向けた。
この馬鹿。お前もこの端末が直れば、俺の監視に支障が出るのだから、そこはちゃんと話に乗れ。ルルーシュは表情には出さないものの、心の中で悪態をついた。

「確かに意味はありませんが、ルルーシュさんのような体質の方が持つと、どのようなデータが取れるのか、それを調べる事もまた研究には必要な事ですので、そのままお持ちください」

いや、普通は、その情報を元に正常な動作をする機械を研究するのであって、幾つか別の端末を持ってきて、それを俺に渡すならともかく、正しい表示が解らないままのこのデータを解析しても意味は無いだろう。
苦しすぎる言い訳に、ルルーシュもスザクも内心冷や汗をかいていたが、他の人間は特に気がつかなかったようだ。ロロとヴィレッタは、これでばれなくて済むと、胸をなでおろしているようにも見える。
一通り説明を終えた研究員は、別件が入っていて時間が無いのでと、ぼろが出る前に帰っていった。
ルルーシュの端末修理という危機を乗り切り、ホッとしたスザクではあったが、その時、ブリタニア本国では別の問題が起きていた。


全員のデータを取り寄せたブリタニア皇帝が、鬼のような形相でデータを読んでいた。
全身から吹き出る冷気に、ナイトオブワン・ビスマルクをはじめとする側近でさえ、近寄る事が出来なかったという。
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