本当と嘘と 第10話

数学の授業は相変わらず暗号を聞いているような感覚に陥ってしまう。
それでも教師の言葉を聞きながら、スザクはどうにか数式を覚えようと、教科書を睨みつけていたが、やはりなかなか学校に来れない事もあり、前回より進んでいるその内容に、全く付いていけなかった。
これは駄目だな、ちゃんと誰かに順を追って教えてもらわないと、追試すらまともに受けられないだろう。ナイトオブラウンズの一人である自分が、高等教育で追試の上留年は、さすがに不味い。それでなくてもナンバーズ出身というだけで、身に覚えのない悪評が絶えないと言うのに、こんな事を知られれば、物笑いの種としてあっという間に広まってしまう。下手をすれば、教養の無い者にナイトオブラウンズの地位は与えられないと、引き摺り下ろされかねない。
こんな事に付き合ってくれそうな人は・・・そこまで考えた時、スザクはちらりと窓辺に座る友人を見た。
そこには、いつも通り授業中居眠りするルルーシュが居て、またサボっていると呆れながらも、授業を受ける必要のないその頭脳が羨ましくも思えた。真実はどうあれ、今は友人という設定なのだから、きっと頼めば文句を言いながらも、解りやすく丁寧に教えてくれるだろう。休み時間になったら頼んでみようかなと、スザクは視線をルルーシュから黒板へ移動させた。
その時、キラキラと光が反射するのが視界に入り、スザクは思わず眉を寄せた。
寝顔も綺麗なその友人を見ようと、多くのクラスメイトがペン入れや教科書に鏡を仕込み、彼のそんな姿を見ているなんて、知らないのは本人だけ。
当然、シャーリーもそんな一人だ。
だから彼の端末の僕とヴィレッタ以外の298人が全員(*´v`*)でもおかしくは無いし、それだけの人数が1日で登録された事も、彼なら当然なのかもしれない。もしこれを500人上限にした所で、あっという間に上限に達するだろうし、無制限になどしてしまったら、街中を少し歩くだけで、どれだけの人数を記録するか考えただけでも頭が痛い。
その考えで行くならば、騎士団員の名前がそこに混ざっていたとしても、ルルーシュ自信と知り合いかどうかは判断できないと言う事だ。
久々にまともに授業に出たことで、僕はようやくこの事実に気がついた。
最初は298人が全員(*´v`*)なのは故障のせいだと思っていたが、その考えを改め、ルルーシュの端末は故障していない、正常に機能しているのだと僕は結論を出した。
おかげで彼を狙う人数の多さも改めて知る事になった。
僕やジノ、アーニャもラウンズという事で、他の人たちよりも早くに300人埋まったが、彼のようにほぼ全員から高評価などではないし、僕などはほぼ悪い評価だ。
見るだけで不愉快になるので、今はプライベートの上位表示以外見る事は無い。
最初は皆この表示を楽しみ、それほど問題は無かったのだが、日時の経過とともに、状況は悪くなっていた。
軍部内は険悪な空気が漂い、本国では先日殺傷事件が起きたらしい。
幸いエリア11政庁は、ナナリーの穏やかな性格のおかげで、ナナリーに危害を加えようとする者が今は出ていないが、事件後は陛下の命令もありアーニャとジノが付きっきりで護衛をしている。人の心の綺麗な部分だけが見えるならいいが、こう言う物はやはり悪い部分ばかりが目についてしまう為、争いの火種にならない方がおかしいく、むしろ今まで良く事件が起きなかった物だと思ったほどだ。
僕だけ陛下の命令で学園に通う様言われたが、これはおそらくルルーシュの護衛という意味だと思う。だが、学園内は所持者も少ないうえに、全員仲がいいから特に問題は見られず気が楽だった。
そんな気の緩んだ状態の授業中。突然階下がざわざわとざわめき出した。何か問題でも起きたのだろうか?だが、僕の監視対象であり、おそらく護衛対象でもあるルルーシュがここに居る以上確認しに行くわけにもいかない。
念の為ルルーシュを起こすべきだろうか?僕は携帯端末を操作し、ルルーシュの携帯に電話をかけた。ポケットに入れていた携帯のバイブで目を覚ましたルルーシュに、僕は携帯を彼に見えるように机の下からのぞかせ、自分が起した事を伝えると、どうしたんだと言いたげに、ルルーシュは眉根を寄せた。
だが、廊下の騒ぎに気づいた彼は、すぐに平静を装いながら教科書を手に取った。
騒ぎはこちらに近づいてきて、僕は最悪ルルーシュを連れ出す事も考えながら、何時でも椅子から立ち上がり駆け寄れるよう、辺りに気取られないよう身構えた。
複数の足音と、慌てるような、ざわざわと騒ぐ声。
それがこの教室のドアの前まで来ると、勢いよく教室のドアが開かれた。
そしてそこに立っている人物に、僕だけではない、クラスの全員が目を見開き驚いた。

「ルル~シュゥ」

そこには、あの独特な髪形をした、ブリタニアで最も強い力を持つ人、神聖ブリタニア帝国皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが立っていた。
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