日本トルストイ協会前会長
故原 卓也 (元東京外国語大学学長)
ごあいさつ(日本トルストイ協会前会長・故原 卓也)
 日本トルストイ協会は1996(平成8)年12月、全国130名の会員によって発足しました。トルストイは1828年9月9日(新暦)に、父親の領地だった中央ロシアの田園地帯にあるヤースナヤ・ポリャーナ村で生まれました。軍役を課せられ戦地に赴くなど、さまざまな体験をしますが、結局、この地に依拠して著名な大作「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などを次々に世に送り出し、世界的文豪として知られています。彼は思想・哲学・宗教関係の多くの著作を残したのみならず、教育の面でも、自由で豊かな子供の成長をめざす学校を作り、自ら先頭に立って子供たちと学び、生活を共にしたりしました。
 平和・平等、労働や社会に奉仕することに力点を置いたトルストイの思想と論理、実践は、戦火の絶えぬ国際情勢、破壊のやまぬ自然環境のありよう、混迷するわが国の教育の実態などに直面する私たちにとって示唆するところが非常に多く、有意義であります。
 日本トルストイ協会は、@トルストイ研究の資料の探査および研究、Aトルストイ研究者相互の連絡交流、B研究会・講演会などの開催及び収集した資料の出版、トルストイの精神による教育の普及に努める──といったことを、着実に行っていくことを目的としております。
「協会」は、わが国におけるトルストイ研究者が資料や情報を交換し合い、相互に高めていくことを重視していますが、一方で、「まだトルストイについて、よくは知らないけれど、関心があり、学習していきたい」といった人たちを増やし、啓蒙していくことにも、照準を当てています。
 ソ連崩壊後のロシアでは、トルストイがヤースナヤ・ポリャーナに建てた学校をモデルにして、多くの「トルストイ学校」が作られていますが、わが国では遠く大正の時代に、トルストイの教育論に共鳴して学校を設立した人がありました。現・昭和女子大学の創立者・人見円吉氏です。氏と、その志を継いだ人見楠郎・前理事長とによって、昭和女子大学は「学寮研修」「人間的総合教育」などさまざまな特徴をもった学校となっております。その人見前理事長とわれわれトルストイ研究者の出会いが、「協会」立ち上げのきっかけを作りました。
 「協会」はこれまでに、トルストイに関する多くの文献・資料を集め、ロシアの関係者や日本の研究者による何回もの講演会を開き、トルストイゆかりの地をめぐる「トルストイを訪ねる旅」を企画・実行するなどしてきています。
 一人でも多くの研究者・一般の方々が、トルストイに興味・関心を抱かれ、「協会」に加わって来られることを願ってやみません。
日本トルストイ協会会長・原 卓也 (元東京外国語大学学長) 


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